2016年12月25日日曜日

【時習26回3-7の会 0632】~「松尾芭蕉『野ざらし紀行』〔第6回〕(名護屋に入程風吟ス)」「12月18日:浜松市美術館『クールベ・ルノワールからマチスまで~女性を描く』展を見て」「梶本修身『すべての疲労は脳が原因』を読んで」


皆さん、お変わりありませんか? 今泉悟です。
 今日も《会報》【0632】号をお送りします。

■さて今日は、久しぶりに松尾芭蕉(1644-94)の第一作目となる紀行文『野ざらし紀行』〔第6回〕をお送りする。
 前回は、〔第5回〕にて、今から332年前の1684(貞享元)年九月下旬(新暦1107日~25日頃)に芭蕉一行が訪れた「熱田へ」についてお話した。
 今日は、「名護屋に入程風吟ス」についてである。
 早速御覧頂きたい。

1684(貞享元)年 ※
【済】八月中旬(十一~廿日(新暦168492029日頃))‥・江戸深川の草庵を門人千里(ちり(=苗村氏))を伴い、東海道を上方を目指して出立。
【済】八月二十日過ぎ(新暦0930日過ぎ)‥・小夜中山を越える
【済】八月晦日(新暦1008(猶、八月は小の月につき晦日は29) ‥・伊瀬外宮を参詣
【済】九月八日(新暦1016)‥・伊賀上野着、兄半左衛門宅に滞在 ‥・千里の故郷、大和国竹内村千里宅を訪問、吉野山に登る
【済】九月下旬(新暦1028日~1106)‥・今須・山中を経て大垣へ‥谷木因亭に泊す
◆【前(4 & 5 )回&今(6)回】十月初旬~中旬(新暦1107日~25日頃)‥・【済】伊勢の多度権現、桑名本統寺を経て【第5回】熱田へ
 十月下旬(新暦1125日頃~1206)‥・名古屋へ赴く、その後再び熱田へ
 十二月廿五に(新暦16850129)‥・伊賀上野に帰り越年

1685(貞享02)年 ※
 二月(初旬から中旬廿日迄(新暦0305日~0324)) 伊賀より奈良へ、二月堂の行事を配す
 因みに、東大寺二月堂の修ニ会(しゅにえ(=おみずとり))は二月一日~十五日(現在は、新暦030114日に行われる)
 二月下旬(廿一日~晦日(新暦0325日~0403)) 京都鳴滝の三井秋風の山荘に遊ぶ
 三月上旬(朔日~十日(新暦0404日~13) 伏見西岸寺に任口上人を訪ねる
 三月中旬(十一日~廿日(新暦0414日~23)) 水口の駅で服部土芳に逢い数日滞在、のち名古屋へ向かい熱田の桐葉亭へ
 四月四日(新暦0506) 鳴海の下郷知足を訪ねる
 四月五日(新暦0507) 熱田へ戻る
 四月九日(新暦0511) 再び鳴海へ赴く
 四月十日(新暦0512) 鳴海を発ち、江戸へ向かう
 四月下旬(廿一日~晦日(新暦0523日~0601)) 木曾・甲斐を経て江戸へ帰着

《原文》
 名護屋に入(=いる)道の程、風吟(1)ス。

狂句(2)木枯の身は竹斎(3)に似たる哉

       草枕犬も時雨るかよるのこゑ

雪見にありきて

市人(いちびと)よ此(この)笠うらふ(=)雪の傘

旅人をみる。

馬をさへながむる雪の朝(あした)

 海辺に日暮して

海くれて鴨のこゑほのかに白し

《現代語訳》
 名古屋に入る道の途次、句を吟じた。

【意】狂句を詠み乍ら旅をしている自分を見ると、あの仮名草子の主人公「竹斎」にも似ている様だ
【季語】「木枯」:冬 
【解説】この句は、連句『冬の日』の巻頭の句/「竹斎」は仮名草子『竹斎』の主人公の藪医者
    芭蕉は自らを竹斎と重ね合わせている

【意】時雨が降りしきる夜/旅寝の枕に犬の声が聞こえて来る/犬も時雨の侘しさに耐えかねて鳴いているのかナ
【季語】「時雨」:冬
【解説】「犬も」とあることで、芭蕉が犬と風狂の情を味わっている

雪見に浮かれ歩いて、 

【意】町の皆さん、この笠を売ります! 雪を被った風流な笠ですヨ
【季語】「雪」:冬
【解説】「笠」も風狂の系譜上にあるものとして表現されている

旅人を見る。

【意味】雪の朝は何もかも新鮮に見える/普段は気にも留めない馬にも目が行くのだヨ
【季語】「雪」:冬
【解説】この句は「熱田」での作/『熱田皺筥物語』にはこの「発句」に「木の葉に炭を吹起こす鉢/閑水」「はたはたと機織音の名乗きて/東藤」の脇・第三までをあげる

海辺に一日中過ごして、

【意】海を見ているだけで今日も日が暮れいく/沖から鴨の声がほの白い感じで聞こえて来る‥
【季語】「鴫」:冬
【解説】『熱田皺筥物語』には「【前書】尾張国熱田にまかりけるころ、人々師走の海見んとて、舟さしけるに」とある

《語句》
(1)風吟:詩歌を吟ずること
(2)狂歌:『泊船集』『三冊子』では、のち「狂歌」の二字を省く
(3)竹斎:仮名草子(4)『竹斎』の主人公/藪医者/狂歌を詠み乍ら江戸に下る途中名古屋へ立ち寄る
(4)仮名草子『竹斎』:作者富山道冶(?-1634(寛永11))は、伊勢国松坂の商家の出身/京都の名医曲直瀬玄朔について医学を修めた
本作は、1621(元和07)年頃の作/竹斎のmodelは富山の師の曲直瀬玄朔と言われている
(5)ありく:浮かれ歩く

【小生comment
 芭蕉は、この後、故郷の伊賀上野に戻り越年し、二月に東大寺二月堂に詣で、修二会に立ち会う。
 この模様は、332年前の同じ頃の事象としてお届けするので、来月01月下旬を予定している。
 お楽しみに!

■さて、続いての話題は、1218日に浜松市美術館にて見て来た『クールベ・ルノワールからマチスまで~女性を描く』展についてである。
 本展は、19世紀中葉から20世紀前半かけてFranceで活躍した47人の画家たちが描いた女性たちの絵画約60点の企画展である。
 本展は、いわき市美術館、佐世保博物館島瀬美術センター、横須賀美術館、浜松市美術館と地方の美術館のみの巡回企画展である。
 一見地味な展覧会かと思ったが、名品が沢山あって見て大変充実した素晴らしい企画展だったと思う。
 以下に気に入った作品を17(本展leafletRenoirの作品を含む)をご紹介する。

[01]浜松市美術館の外側壁面上部に掲示された本展看板
[02]浜松市美術館入口
                  
[03]本展leaflet/右絵:Auguste Renoir(1841-1919)『肖像画の習作』製昨年不詳

[04]Gustave Courbet(1818-77)『回想(La Reflexion)1864
                           
[05]Julien Dupre(1851-1910)『草原の中で(Dans la prairei)1881

[06]Auguste Renoir『麦わら帽子の少女』1885
                  
[07]Jean -Paul Laurens(1838-1921)『東洋の女性』製昨年不詳

[08]Edmond Picard(ピカール)(1861-99)『甘い待ち時間』1894
                  
[09]Henri Le Sidaner(1862-1939)Piettre(ピエトル夫人の肖像)1896

[10]Pierre Bonnard(1867-1947)『服を脱ぐmodel』制作年不詳
                  
[11]Remi Cogghe(コッグ)(1854-1935)『洗濯女』1907

[12]Suzanne Valadon(1865-1938)contrabass奏者』1908
                  
[13]Antoine Calbet(アントワーヌ・カルベ)(1860-1944)Les Ondines (オンディーヌ)1909

[14]Auguste Renoirmademoiselle Francois1917
                  
[15]Henri Matisse(1869-1954)Marguerite Matisse1921

[16]Andre Maire(メール)(1898-1984)Andre Maire夫人』1924-25年頃
                  
[17]Germaine Lantoine-Neveu(ラントワーヌ=ヌヴー)(1892-1978)『自画像』1925年頃

[18]Moise Kisling(1891-1953)『赤い洋服のMontparnasseのキキ(Kiki)1933
                  
[19]Marie Laurencin(1885-1956)『ギターを持つ若い女性』1940

【小生comment
 ご覧になって如何でしたでしょうか?
 皆さんは、誰のどの絵が気に入りましたか?
 いつの時代も男にとって女性は、「賢い母」であり、「頼りになるpartner」であり、「美しく愛しい恋人」‥かな?

■今日最後の話題は、最近読んだ梶本修身『疲れているのは体じゃない 脳だった!』についてご紹介する。

 なぜ「体が疲れた」と感じるのか?
 その答えは「脳の自律神経の中枢」にあった。
 ヒトは、運動を始めると、数秒後には心拍数が上がり、呼吸が速く大きくなる。
 又、体温の上昇を抑える為に発汗する。
 それを秒単位で制御しているのが「脳の自律神経の中枢」と呼ばれる視床下部(ししょうかぶ)や前帯状回(ぜんたいじょうかい)なのである。
 運動が激しくなると、この「脳の自律神経の中枢」での処理が増加する。
 その結果、脳の細胞で活性酸素が発生し、酸化 stress の状態に晒されることで錆びつき、本来の自律神経の機能が果たせなくなる。
 これが脳で「疲労」が生じている状態、つまり「脳疲労」である。
 そして、ヒトは、その時に「体が疲れた」とという signal を眼窩前頭野(がんかぜんとうや)に送り、「疲労感」として自覚するのである。
                 〔はじめに‥疲労を科学することとは‥より〕

 第一章/疲労の原因は脳にあり
 第二章/疲労の原因物質とは‥疲れの直接の原因となるのは活性酸素‥
 第三章/日常的な疲労の原因はいびきにあった
     →・夕方以降は、
      [1] 照明を浴びない様に、
      [2] 入浴は、就寝前12時間前に3840度の湯船に8分程度、
      [3] 夕飯は、就寝前3時間に食べ終わる様に低脂肪で消化のよい menu にすると、安眠できる
 第四章/科学で判明した脳疲労を改善する食事成分
     →・疲労回復成分
      [1]「〔抗酸化と細胞の損傷を防ぐ〕【イミダペプチド】」を、鶏の胸筋かsupplementで、
      [2] 「クエン酸〔mitochondriaで再びenergyが産出され〕」を、摂取すれば、疲労が回復
 第五章/「ゆらぎ」のある生活で脳疲労を軽減する
     →・自然環境に存在うる人の生体も常にゆらいでいるから、自然界の「ゆらぎ」と人体の「ゆらぎ」がシンクロすることが「心地よさ」を齎している
     →・観葉植物の緑色の葉っぱを一枚ちぎり、くしゃっと丸めるだけでも「緑青の香り」を嗅ぐことができる
イミダペプチドと違い「緑青の香り」は即効性が高い一方で、抗疲労作用はその場限りのもの
       その特徴を踏まえ、眠る直前や仕事等で疲れが溜まりそうな時に「緑青の香り」を嗅ぐのが効果的
 第六章/脳疲労を軽減するためにworking memoryを鍛える
     →・working memory とは、real timeinputされる情報(=短期記憶)を受け入れ乍ら、
過去の記憶、学習、理解等(=長期記憶)と結び付けて複数のことを同時に考える、又行うことを可能にする脳の力、一連の動き
     →・効果的な「記憶のタグ付け」のコツは「感動する」こと
     →・「記憶にタグ付け」で情報を有効活用する
     →・working memory の基礎力は「再生」にあり〔P.184
※ Working memory を強化する時に大事になるのは、記憶力の「再生」能力である
  ヒトは記憶を想起する時、「再生(Recall)」と「再認(Recognition)」を行っている
 これは認知心理学の用語だが、「再生」とは「Hint なく過去の事象を自分で思い出す」ことで、
 「再認」とは「Hintや選択肢等連想に拠って思い出す」ことをいう
 「再生」は加齢と共に低下し、「再認」は加齢には左右されにくいことが分かっている
 そして「再生」力を鍛えるには、「記憶に『感動』を伴うことが必要で、そうする為には「日常生活に感動する機会を増やす」こと重要になって来る
 「趣味やsportsの時間を持つ」「展覧会に出かける」「旅をする」「友人との会話を楽しむ」等の行動を起こすことにより、その時、その場所、その状況での新しい情報を、喜怒哀楽を伴う感動した事象として個々のタグをつけることが出来る
 すると自然と「再生」力の向上に繋がっていく
     →・日常的に working memory を鍛える3つの方法
      [1] ものごとを多面的にみる習慣をつけること
      〔‥・多面的にみてタグ付けが多い記憶ほど検索し易くなり、其処に感動が伴うと検索効率は更に向上する〕
      [2] 多くの人と会話して communication を交わすこと
      [3] 色々な事象に興味を持ち、多趣味になること
      〔‥・沢山の趣味がある程、様々な分野の事柄に感動し易くなり、タグ付けされた記憶が増える〕

[20]梶本修身『すべての疲労は脳が原因』&『同2』
                  
【小生comment
 「趣味やsportsの時間を持つ」「展覧会に出かける」「旅をする」「友人との会話を楽しむ」等の行動を起こすことにより、その時、その場所、その状況での新しい情報を、喜怒哀楽を伴う感動した事象として個々のタグをつけることが出来る‥‥という梶本氏のcommentは、小生、日々実践中の事柄であり、「我が意を得たり」である。
 引き続き、「再生」力の低下を極小化して、いつまでもボケない脳で元気に生きていきたものである。

【後記】1218日訪れた浜松市美術館は、同じ公園内に浜松城がある。
 その日は快晴で、お城がとても綺麗に見えた。
 その野面積みの石垣で有名な浜松城の写真を3枚ご紹介してお別れする。

[21]浜松城天守閣1

[22]浜松城天守閣2
                  
[23]浜松城天守閣3

 ではまた‥。()

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