2018年4月13日金曜日

【時習26回3-7の会 0700】~「松尾芭蕉『猿蓑集 巻之四 春〔第10(=最終)回〕』」「04月07日:『苗木城跡』→『苗木遠山史料館』→『中山道/落合宿・本陣』→『美濃金山城跡』→『満開の花桃』→『虎渓山・永保寺』→『鞍ヶ池アートサロン「春、明日へのいぶき」展』を巡って」

■時節は『清明』。七十二候でいうと、『清明・次候』の「鴻雁北(こうがんきたへかえる)」。
 皆さん、お変わりありませんか? 今泉悟です。今日も【時習26回3-7の会 0700】号をお届けします。

 此の《会報》も200601月に開始してついに700回を迎えました。
 123カ月の歳月が過ぎたことになる。
 そして、我々の齢も満51歳から始め、今年は愈々63歳になる。正に「歳月人を待たず」だ。
  【2637の会】のmembersの皆さん! 引き続き【時習26回3-7の会】を宜しくお願いします。

 さて、今日最初の話題は、『猿蓑』〔巻之四〕『春』の〔第10回〕目をお届けする。
 今回で、巻之四『春』も最終回となった。


 それでは、発句全118句のうちの最後の第108句~118句についてお伝えするのでご覧下さい。

【 松尾芭蕉『猿蓑』〔巻之四〕『春』〔第9回〕】

   猿蓑集 巻之四



  庚午の歳家を焼て


108 (やけ)にけりされども花はちりすまし  加刕北枝

【意】大火があり街は焼けたが、不幸中の幸い、折しも桜は既に散ったあとであった


【解説】元禄3316日夜から翌日にかけて金沢であった大火があったことを踏まえ詠んだ句

109 はなちるや伽藍(がらん)の樞(くるる)(1)おとし行(ゆく)  凡兆

【意】桜花の散った春の夕暮れ、大伽藍の広い境内の戸を一枚/\当番の僧が閉めていく/そのとき樞を落としていく


【解説】―
(1)(くるる):戸締り用に敷居の穴に詰める桟(せん)のこと

110 海棠のはなは滿(みち)たり夜(よる)の月  江戸普船

【意】月明かりの下で海棠の花が爛漫に咲いている/美しい春宵の一情景‥


【解説】―

  大和行脚(あんぎゃ)のとき

111 草臥(くたぶれ)て宿(やど)かる比(ころ)や藤(ふじ)の花  芭蕉



【意】今日も一日歩き疲れた/夕暮れ間近なので旅宿を探していたらゆったりとした雰囲気の薄紫色の藤の花が眼前に見えた
【解説】411日、高市郡八木の旅宿での吟


「ほとゝぎす宿かる頃や藤の花」(元禄元年0425日付/猿雖(えんすい)宛芭蕉書簡)が初案で、季語「ほとゝぎす」で夏の句であったもの
 藤の花が暮春の夕暮れのもの憂さの象徴であるかの様に薄紫色に垂れている
 徒然草第十九段に、藤の花は「おぼつかなきさま」をしているとあるが、芭蕉も猿雖宛書簡に其の事を述べている
 この「覚束なさ」は、芭蕉にとっては旅情の「寄る辺()なさ」でもあった

112 山鳥(やまどり)や躑躅(つつじ)よけ行(ゆく)()のひねり  探丸

【意】美しい尾長の山鳥が上手に尾羽を操ってツツジの樹林の中を歩いていくヨ


【解説】―

113 やまつゝじ海に見よとや夕日影(ゆうふひかげ)  智月

【意】湖畔の山に咲いているツツジの花が夕日に真っ赤に染まっている/


 その美しい姿が湖面に映り、山より海(=湖面)に映った姿を見よと言っている/実に鮮やかな景色である
【解説】―

114 兎角(とかく)して卯花(うのはな)つぼむ弥生(やよひ)哉  山川

【意】かくして卯の花が散り弥生三月も過ぎていく/春ももう終わりだ


【解説】―

115 (うそ)(1)の聲(こゑ)きゝそめてより山路(やまぢ)かな  伊賀式之

【意】鷽の声が聴こえた辺りから道が山路らしくなって来た


【解説】―
(1)(うそ):スズメ目アトリ科の鳥/頭は黒、背は青灰色/腹は灰色/
 雄のほおはバラ色/日本では本州中部以北で繁殖し、冬は暖地に渡るものが多い/
 和名は、ヒーホーと口笛を吹くように鳴く処から、口笛を意味する古語「うそ」に由来する
  「鷽鳥は山林にすむ鳥にして、声と色とを賞せらる/されば此鳥囀る頃こそ、山路の旅行、余寒も去りて暖和なるに霞分け行さま、実に山中旅寝の時節になりたりといふ意にして、言外に味ふべし」と『猿蓑さがし』にある

  木曾塚(きそづか)(1)

116 (その)春の石ともならず木曾の馬  乙刕



【意】武士の墓には、傅(かしず)く石の馬があるものだが、木曽義仲の墓にはその石の馬さえなく不憫である
【解説】―


(1)木曾塚:大津義仲寺境内の木曽義仲の墓

117 春の夜はたれか初瀬(1)の堂籠(だうごもり)  曾良

【意】大和国泊瀬山長谷寺の観音堂に春の此の夜を誰やらが籠っている‥/


 大きな御堂の黒い影から香烟がゆるく流れて来る‥
【解説】元禄04年、曾良が大和行脚した時の作/
  『笈の小文』にある芭蕉の句「春の夜や籠(こも)り人ゆかし堂の隅」と等類/
 故に「再案して曾良に与へ給ふにや/誰かといふ所にゆかしの意あるべし」(猿蓑さがし)とある様に、芭蕉は自句を捨てて此の句を『猿蓑』に収めたものとみられる
(1)初瀬:長谷寺のこと

  望湖水惜春(‥湖水を望み春を惜む‥)

118 行春を近江の人とおしみける  芭蕉



【意】琵琶湖のある近江の国の春の美しさを近江の人たちと過ごし、行く春を近江の人たちと惜しんだ/
【解説】此の句からは、実に充実した日々を過ごすことが出来たという、芭蕉の満足感が伝わって来る


 元禄33月 芭蕉47歳の時の作/
  『去来抄』にはこの句について次ぎのようにある/
  「先師曰く、「尚白」が難に、近江は丹波にも、行く春は行く歳にも振るべし、といへり。汝いかが聞き侍るや。」
 去来曰く、「尚白が難あたらず。湖水朦朧として、春を惜しむに便有るべし
 殊に今日の上に侍る。」と申す
 先師曰く、「しかり。古人も此の国に春を愛すること、をさをさ都におとらざるものを。」
 去来曰く、「此の一言心に徹す。行く歳近江にゐ給はば、いかでか此の感ましまさむ
 行く春丹波にいまさば、本より此の情うかぶまじ
 風光の人を感動せしむること、真なるかな。」と申す
 先師曰く、「汝は去来、共に風雅を語るべきものなり。」と殊更に悦び給ひけり」

      

 去来が尚白の「近江は丹波でもいい」「行く春は行く歳でもいい」との評を一蹴して、「近江の人々」と「近江の琵琶湖」で「春を惜しむ」から此の句が意味を成すのだと述べた
 芭蕉は、去来がこう述べたことをたいそう喜んだという
 更に言えば、芭蕉は此の句をつくる前提として「琵琶湖の春」を詠んだ多くの古歌が彼の脳裏に沢山あったと思われる
 琵琶湖のある近江の国の春の美しさを近江の人たちと過ごし、行く春を近江の人たちと惜しんだ時詠んだ句‥と昔より評価が高い傑作である
 因みに、上五の初案は「行春や」であった

【小生comment
 今回で、松尾芭蕉『猿蓑/巻之四』は完結した。

 次回以降は、同じく芭蕉の『猿蓑/巻之五〔冬・夏・秋・春〕』から、今回も順番を入れ替えて今の時節に合わせ「春」をお届けしたい。
 お楽しみに!

■続いての話題は、0407()に『苗木城跡』『苗木遠山史料館』『中山道/落合宿・本陣』『美濃金山城跡』『満開の花桃』『虎渓山・永保寺』『鞍ヶ池アートサロン「明日へのいぶき」展』と巡って来たことについてご報告する。
 
0705分 拙宅発〔豊川IC→東名東海環状土岐JCT→中央自動車中津川IC134 2時間〕

0905分 苗木城跡 駐車場着
1012分 苗木遠山史料館着

 苗木遠山氏は、10,021石の江戸幕府下 最小の城持ち大名として有名。
 江戸時代末期、大名の最小石高 1万石の藩は53藩あったが、苗木遠山氏以外の52藩の藩庁は城ではなく、陣屋という屋敷であった。



[01]苗木城跡の駐車場から本丸へ向かう途中で見つけたミツバツツジの前にて

[02]苗木城跡天守台を遠望して

                  
[03]苗木城跡本丸から眼下に木曽川を遠望する〔赤い散椿が風趣があっていい

[04]中津川市苗木遠山史料館の脇にある苗木城跡の看板前にて
                  
[05]中津川市苗木遠山史料館外観


1040分 苗木遠山史料館発〔一般道〕
1055分 落合宿 本陣着



 落合宿 本陣の入口でロケがあった。聴いてみたら、NHKの取材だそうだ

[06]落合宿・本陣外観


                  
[07]落合宿本陣入口にて

[08]NHKのロケ取材中のscene
                  
[09]落合宿・本陣の内部


1115分 同所発〔中津川IC→中央自動車土岐JCT→東海環状可児御嵩IC57 50分 〕
1220分 美濃金山城跡 駐車場着〔徒歩〕
1237分 美濃金山城跡 本丸着

 美濃金山城は、1537(天文06)年 斎藤道三(1494(?)-1556)の命で猶子 斎藤正義が築城。
 1565(永禄08)年 織田信長(1534-82)配下の森可成(よしなり(1523-70))が城主となった。


 森可成の息子に森長可(1558-84)や森成利(蘭丸(1565-82))等がいるが、彼等の多くは戦死。
 森可成の六男 森忠政(1570-1634)が森氏の命脈を保ち、信濃国川中島藩(137,500)→美作国津山藩(186,500)→播磨国赤穂藩(2万石)→明治維新に至る。
 
[10]可児市観光交流館内部にて
                  
[11]金山城跡本丸石碑前にて

[12]美濃金山城興亡の歴史解説板‥
                  

1255分 美濃金山城跡発〔一般道〕
1308分 花桃満開の道路脇にて



[13]満開の花桃の樹林の前にて1

[14]同上2

                  
[15]同上3

[16]綺麗な花桃1
                  
[17]同上2

[18]同上3
                  

【前書】美濃金山城跡を後にして虎渓山 永保寺に向かう途上で、道路脇に花桃が爛漫に咲いていた。
 感動して車を停めて撮影した。
 そして、其の時の感動を拙句にしてみた。

  花桃や 此れぞ現世の 桃源郷  悟空

1320分 花桃満開の道路脇発〔可児御嵩IC→東海環状土岐JCT→中央自動車多治見IC12 25分〕

1350分 虎渓山 永保寺 着



 永保寺は、1314(正和03)年 京都五山第1位 天龍寺 開基の夢窓疎石(1275-1351)が虎渓山に観音堂【国宝】を建立。
 永保寺は、夢窓疎石の開創、彼と共に高峰顕日(こうほうけんぴ(1241-1326))に師事した元翁本元(げんのうほんげん(1282-1332))を開山とする。



[19]永保寺【国宝】観音堂前にて

[20]同上2

                  
[21]永保寺の銀杏の前にて

[22]永保寺【国宝】開山堂
                  
[23]永保寺【国宝】開山堂・観音堂の解説

[24]永保寺の際を流れる庄内川の支流「土岐川」
                  

1430分 虎渓山 永保寺 発〔多治見IC→中央自動車土岐JCT→東海環状鞍ヶ池SA(ETC IC)45 35分〕
1505分 トヨタ鞍ヶ池記念館/鞍ヶ池アートサロン着『春、明日へのいぶき』展

 本企画展は、過日ご紹介済だが、「いいものはいい」ので今日もお示しする。

[25]トヨタ鞍ヶ池記念館外観



[26]鞍ヶ池アートサロン入口近くにて
                  
[27]本展leaflet・出品目録・プレゼントされたpostcard 2枚・栞1

[28] アルフレッド・シスレー(1839-99)『春の朝・ロワンの運河』1897
                  
[29] 萬鐡五郎(1839-99)『春』1912

[30] カミーユ・ピサロ(1830-1903)『春』1912
                  
[31] 藤島武二 (1867-1943)(1867-1943)『鳥羽の海』1930

[32] モーリス・ド・モーリス(モリス)・ド・ヴラマンク(仏:Maurice de Vlaminck 1876-1958)『花瓶の花』1930年代
                  
[33]トヨタ創業展示室内1

[34]同上2
                  

1540分 同所発〔鞍ヶ池SA(ETC IC)
1645分 帰宅着
1430分 同所発〔多治見IC→中央自動車土岐JCT→東海環状鞍ヶ池SA(ETC IC)45 35分〕
1505分 トヨタ鞍ヶ池記念館/鞍ヶ池アートサロン着
1540分 同所発〔鞍ヶ池SA(ETC IC)
1645分 帰宅

【小生comment
 現代日本のマチュピチュとも云われる「苗木城跡」、中山道の宿場町「落合宿・本陣」、戦国大名可成の居城「美濃金山城跡」、無双国師が開創の「虎渓山・永保寺」の史跡群のいずれもが良かった。

 又、美濃金山城跡から永保寺へ行く途上で偶然見つけた花桃の桃源郷の様に美しい樹林も素晴らしかったし、トヨタ鞍ヶ池記念館内にある鞍ヶ池アートサロンの「『春、明日へのいぶき』展の名画の数々も感動的だった。
 史跡名勝に歴史の出来事に思いを遣り、名画の様に美しい自然の風景や、名画が奏でる美しさに感動する‥
 こうして「ときめき」を感じ続けて、元気に明るく生きて行きたい。

【後記】お別れは、0401日の1800分から豊橋市佐藤3丁目にあるカフェ・アコーディアナにて開催された、中学校時代の同期生 富安秀行君のライブを聴いて来た時撮影した snapshots 4枚をご紹介してお別れする。


 富安君の曲は、人膚の温もりが伝わって来てとっても魅力的で聴き易く、小生は大好きだ。

[35]会場となったカフェ・アコーディアナ入口

[36]冨安君と、共演者でaccordion奏者の田ノ岡三郎さんの演奏

                  
[37]冨安君と、中学時代の一年後輩の原田君とのsnapshot

[38]ライブのencore曲 コーヒールンバを演奏するアコーディアナのownerを挟んで冨安君と田ノ岡さん
                  

 では、また‥〔了〕

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