■さて今日は、前《会報》に続いて、松尾芭蕉(1644-94)の第一作目となる紀行文『野ざらし紀行』〔第6回〕をお送りする。
今から332年前の1684(貞享元)年九月下旬(新暦11月07日~25日頃)に芭蕉一行が訪れた「熱田へ」についての話である。
因みに、次(第7)回は、芭蕉の故郷「伊賀上野」での越年の処なので、本《会報》に掲載するのは12月下旬を予定している。
※ 1684(貞享元)年
※
【済】八月中旬(十一~廿日(新暦1684年9月20~29日頃))‥・江戸深川の草庵を門人千里(ちり(=苗村氏))を伴い、東海道を上方を目指して出立。【済】八月二十日過ぎ(新暦09月30日過ぎ)‥・小夜中山を越える
【済】八月晦日(新暦10月08日(猶、八月は小の月につき晦日は29日) ‥・伊瀬外宮を参詣
【済】九月八日(新暦10月16日)‥・伊賀上野着、兄半左衛門宅に滞在 ‥・千里の故郷、大和国竹内村千里宅を訪問、吉野山に登る
【済】九月下旬(新暦10月28日~11月06日)‥・今須・山中を経て大垣へ‥谷木因亭に泊す
【済】十月初旬~中旬(新暦11月07日~25日頃)‥・伊勢の多度権現、桑名本統寺を経て熱田へ
◆【今(第6)回】十月下旬(新暦11月25日頃~12月06日)‥・名古屋へ赴く、その後再び熱田へ
十二月廿五に(新暦1685年01月29日)‥・伊賀上野に帰り越年※ 1685(貞享02)年 ※
二月(初旬から中旬廿日迄(新暦03月05日~03月24日)) 伊賀より奈良へ、二月堂の行事を配す
因みに、東大寺二月堂の修ニ会(しゅにえ(=おみずとり))は二月一日~十五日(現在は、新暦03月01~14日に行われる)
二月下旬(廿一日~晦日(新暦03月25日~04月03日)) 京都鳴滝の三井秋風の山荘に遊ぶ
三月上旬(朔日~十日(新暦04月04日~13日) 伏見西岸寺に任口上人を訪ねる
三月中旬(十一日~廿日(新暦04月14日~23日)) 水口の駅で服部土芳に逢い数日滞在、のち名古屋へ向かい熱田の桐葉亭へ
四月四日(新暦05月06日) 鳴海の下郷知足を訪ねる
四月五日(新暦05月07日) 熱田へ戻る
四月九日(新暦05月11日) 再び鳴海へ赴く
四月十日(新暦05月12日) 鳴海を発ち、江戸へ向かう
四月下旬(廿一日~晦日(新暦05月23日~06月01日)) 木曾・甲斐を経て江戸へ帰着
《原文》
名護屋(なごや)に入(いる)道の程(ほど)、風吟(ふうぎん)(注1)ス。
狂句木枯(こがらし)の身は竹斎(ちくさい)に似たる哉
草枕(くさまくら)犬も時雨(しぐる)ゝ(=る)かよるのこゑ
雪見にありき(注2)て
市人(いちびと)よ此(この)笠うらふ(=う)雪の笠
旅人をみる。
馬をさへながむる雪の朝(あした)哉
海辺に日暮(くら)して
海くれて鴨のこゑほのかに白し
《現代語訳》
名古屋に入る道の途上で句を吟じた。
【意】狂句を詠み乍ら旅をしている吾が身は、仮名草子『竹斎』の主人公 竹斎にも似ていることだ
【季語】木枯(こがらし):「冬」【解説】竹斎は狂句を詠みながら諸国遍歴を続ける藪医者
この句は、連句『冬の日』の巻頭の句〔発句〕
「竹斎」は仮名草子『竹斎』の主人公の藪医者で、狂句を詠みながら全国を渡り歩いた名古屋も作中で訪れており、芭蕉は名古屋訪れる模様を竹斎と重ね合わせている
【意】時雨が降り頻(しき)る夜、旅寝の枕に犬の鳴き声が聞こえて来て、一層侘しさを感させる
【季語】時雨:「冬」【解説】「草枕」は旅寝のこと/「時雨る」は時雨と落涙を連想させる
雪見に浮かれ歩いて‥
【意】町の皆さん! この笠をお売りしましょう/雪を被(かぶ)った、風流な、雪の笠を
【季語】雪:「冬」【解説】「笠」は、風狂の系譜の語の一つ
旅人を見る。
【意】雪の朝は、何か新鮮に見える/だから、いつも気に止めず見ている馬の姿さえ目が惹かれる
【季語】雪:「冬」海辺にて一日中を過ごして‥
海くれて鴨のこゑほのかに白し
【意】海を眺めていただけで今日は日が暮れた/沖の方から鴨の声が仄(ほの)白い感じで聞こえて来るヨ
【季語】鴫(しぎ):「冬」【解説】「鴫」が望郷の念を誘う/この句は「中の句」「下の句」が5・7文字の句跨りになっている
《語句》
(注1)風吟:詩歌を吟ずること(注2)ありく:浮かれ歩く
■続いては、11月17日に、小生、仕事で上京する機会があり、仕事を終えた後、欲張って、国立新美術館『ダリ』展&東郷青児記念
損保ジャパン日本興亜美術館『カリエ―ル』展&Bunkamura ザ・ミュージアム『ピエール・アレシンスキー』展と3つの企画展を見て来たのでその模様をお伝えする。
【国立新美術館『ダリ』展】
ダリは、キュビズムの影響も受けつつ、彼独自のSurな世界を創出した。彼も、ピカソの様に、一代で作風に大きな変遷がある。
その絵の違いを以下に添付した絵画から感じ取って頂けると思う。
[01]国立新美術館『ダリ展』看板前にて
[02]ダリ『パニ山からのカダケスの眺望』1921年頃
[03]ダリ『ピュリスム風の静物』1924年
[04]ダリ『子供、女への壮大な記念碑』1929年
[05]ダリ『ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌』1945年
[06]ダリ『素早く動いている静物』1956年頃
[07]ダリ『チェロに残酷な攻撃を加えるベッドと二つのナイトテーブル』1983年
【東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館『カリエ―ル』展】
カリエールの作品は、例外なく「セピア色世界」であった。
色合いと彼の作風が織り成す不思議な癒しの世界に浸ることが出来た。
[08]東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館が42階にある損保ジャパン日本興亜本社ビル
[09]損保ジャパン日本興亜本社ビル入口の『カリエール』展案内看板
[10]カリエール『カリエール夫人の肖像』1884年頃
[11]カリエール『手紙』1887年
[12]カリエール『ポール・ガリマール夫人の肖像』1889年
【Bunkamura ザ・ミュージアム『ピエール・アレシンスキー』展】
アレシンスキーの絵は、一見すると「混沌」の世界なのだが、よく見ていると、色合いと絵画に不思議なbalanceが取れていて心地よささえ感じる不思議な作品群である。
小生、彼の古典は初めて見たが、一度で彼の大ファンになって仕舞った。
[13]本展leaflet
[14]アレシンスキー『盾蟹』2016年
[15]アレシンスキー『ときには逆もある』1970年
[16]アレシンスキー『見張り』1977年
[17]アレシンスキー『見本』1979年
[18]アレシンスキー『至る所から』1982年
【小生comment】
今月は、東京で2回、10月25日を含めると、1ヶ月以内に東京だけで10箇所の美術館を巡ったことになるが、いずれも素晴らしい企画展であった。名画は本当にいいものである。
■今日最後の話題は、最近読んだ、池谷敏郎『「血管を鍛える」と超健康になる』についてである。
本書は、循環器内科が専門の医師 池谷氏が、最近注目されているNO(一酸化窒素)を体内で生成させ、血管を若返らせれば、循環器系の病気を防ぎ、長生きが出来るという本である。
NOを生成するには、walking等の有酸素運動や、ふくらはぎと足首を刺激して、「ジンジン」させることで可能となる。
食物としては、青魚に豊富に含まれるEPAを摂取することにより、血管を若返させられるという。
本書は、生活習慣で若返ることが十分に可能なので、皆さんも是非試してみて下さい。
[19]池谷敏郎『「血管を鍛える」と超健康になる!』
【後記】11月22(火)~24(木)の3日間、会社から2日間の休暇を貰い『古都奈良の一人旅』を満喫した。
美しい仏像「浄瑠璃寺/吉祥天女像」「興福寺国宝館/阿修羅像」「秋篠寺/伎芸天像」「法隆寺 中宮寺/弥勒菩薩像」の4体と、亀井勝一郎が「伽藍のシンフォニー」と呼んだ唐招提寺伽藍をこの眼で確かめる旅である。
本当は、本mailにて初日の模様をお伝えしたかったが、次回《会報》にてお届けすることとする。
ではまた‥。(了)
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