2020年5月15日金曜日

【時習26回3−7の会 0811】~「松尾芭蕉:俳諧七部集『あら野』から〔第29回/第271句~280句〕」「『山ほととぎす』を詠んだ名句二句について」


■皆さん、お変わりありませんか? 今泉悟です。今日も【時習26回37の会 0811】号をお届けします。
 今日最初の話題は、松尾芭蕉(1644-94)「俳諧七部集『あら野』から〔第29回/第271句~280句〕」をご紹介する。

271 ひらひらとわか葉()にとまる故(=)(こてふ)(かな)  竹洞(1)

【意】ひらひらと飛んで来た蝶が、若葉にとまる / 思わず落ち葉かと思って仕舞う / 意外性を詠む
【解説】季語:わか葉=初夏 /
(1)人見竹洞(ひとみ ちくどう(1628(?)-1696.02.16(元禄090114(享年69))):京の儒学者 / 名:節 / 通称:友元 /『本朝通鑑』編者の一人 /『あら野』等に入句

272 ゆあびして若葉(わかば)見に行(ゆく)(ゆふべ)かな  鈍可(1)

【意】ひと風呂浴()びて汗を流した後の気持ちの良い夕方、新緑を見に行くことになった
【解説】季語:若葉=初夏 /
(1)鈍可(どんか(生没年不詳)):尾張国の人 /『あら野』等に入句

273 はげ山や下(した)(ゆく)水の澤卯木(さわうつぎ)  夢々(1)

【意】禿山(はげやま)の麓に卯の花が白い花を咲いている / 其の卯の花の根元辺りを澤の水が流れていく
【解説】季語:澤卯木(さわうつぎ)=初夏 /
(1)夢々(むむ(生没年不詳)):尾張国津島の人 /『あら野』に2句入句

274 ()ゲ土(つち)(1)にいつの種(たね)とて麥(むぎ)一穂(ひとほ)  玄寮(=)(1)

【意】上げ土の頂きに穂を出した麦が一本生えている / 何時蒔かれた種なのか分からないが‥
【解説】季語:麥一穂=初夏 /
(1)()ゲ土(つち):何かの作業で土置き場を作って土を盛り上げておいた場所のこと
(2)玄察(げんさつ(生没年不詳)):尾張国の人 /『あら野』に入句

275 枯色(かれいろ)は麥(むぎ)ばかり見る夏(なつ)の哉(かな)  生林(1)

【意】麦秋の景色 / 一面緑一色の夏野の中に、麦畑だけが冬景色のように枯色だ
【解説】季語:麥=初夏、夏の(=夏野)=三夏 /
(1)生林(せいりん(生没年不詳)):人物について詳細不詳

276 (むぎ)かりて桑(くは)の木()ばかり残りけり  作者不知(1)

【意】麦刈が終わり、畑の畦にある葉を蓄えた桑の木だけが残った / 次は養蚕の作業が待っている
【解説】季語:麥かりて=初夏 /
(1)作者不明

277 むぎから(1)にしかるゝ里の葵かな  鈍可

【意】麦の脱穀が終わって大量の麦藁(むぎわら)を、庭の隅に取り敢えず積み重ねていくうちに、葵が生えていた一叢(ひとむら)が麦藁の下敷きになって仕舞った
【解説】季語:むぎから=初夏、葵=仲夏 /
(1)むぎから(麦幹):麦藁のこと

278しら芥子(げし)(1)にはかなや蝶(てふ)の鼠(ねずみ)いろ

【意】白芥子の白い花が咲いている / 其処へ白い蝶が飛んで来たが、白芥子の白さには敵わず、蝶の白色は灰色(=鼠色)に見えて来る
【解説】季語:しら芥子=初夏 /
(1)しら芥子(げし):白芥子(しらげし)
(2)松倉嵐蘭(まつくら らんらん(1647(?)-1693.09.26(元禄060827)):松倉盛教 / 蕉門最古参の門人 / 江戸浅草在住 / 三百石取りの武士だったが、44歳で致仕 / 俳諧専一の生活に入った / 老荘思想の持主で芭蕉とは意気投合 / 芭蕉も嵐蘭には一目置いていたと云う / 元禄0647歳で急逝 / 嵐蘭急死の報に応えた弟嵐竹への書簡がある / 芭蕉は嵐蘭の死を悼み、「秋風に折れて悲しき桑の杖」「見しやその七日は墓の三日の月」の句を詠んだ

279 (とり)(とび)てあぶなきけしの一重(ひとへ)(かな)  落梧(1)

【意】芥子(ケシ)の花は二、三日で儚く散って仕舞う / 空を飛ぶ鳥の羽ばたきでも散って仕舞う位の儚さなのだ
【解説】季語:けしの一重=初夏 /
(1)安川落梧(やすかわ らくご(1652(?)-1691(元禄0405(享年40)))1688(貞亨05)年以来の美濃国の門人 / 通称:助右衛門 / 呉服商を営む萬屋(よろずや)の主人 /『笈日記』等に入集 /『瓜畠集』を編集するも病魔に倒て未完 / 長良川近くの稲場山城山陰に別邸を持ち、芭蕉が『笈の小文』の旅の途次此処に立ち寄った / 芭蕉は、「奥の細道」に出立する直前の1689.05.12(元禄020323)に落梧宛に紙一束受贈の礼状を書き、此れが「奥の細道」出発日付確定の根拠となった

280 けし散(ちり)て直(すぐ)に實()を見る夕(ゆふべ)(かな)  岐阜 李桃(1)

【意】芥子の花は儚く散るが、後に大きな食用・薬用になる芥子坊主を付ける / 花が散ってがっかりする暇(いとま)もなく実のことを期待する様にもなるのだ
【解説】季語:芥子=初夏 /
(1)李桃(りとう(生没年不詳))美濃国岐阜の人 /『あら野』等に入句

【小生 comment
 次回は、俳諧七部集『あら野』から〔第30回/第281句~290句〕をご紹介する。お楽しみに!

■続いては、拙宅での話。
 050910日の土日は、久しぶりに一日中家にいた。
 勿論、毎朝の2,000回の腹筋と2.5kg木刀素振り60分は実施した。
 そして、以下の内容の記事を Facebook up したのでご紹介する。
 其の日は、一週間前の 0503日『普門寺への逍遥』の途次眼に入った新緑の山の写真を見乍ら以下の通り想像を逞しくした。
 今の時節『初夏』に因んだ名句をご紹介する。

  目には青葉山ほととぎす初がつほ 素堂

  谺して山ほととぎすほしいまま 久女

    ※  ※  ※  ※  ※

 齢四十六の松尾芭蕉(1644-94)が江戸・深川を出立し「奥の細道」の旅に赴いたのは元禄二年三月二十七日。

 陽暦16890516日。今から丁度331年前の今週末に当たる。

 「奥の細道」に2句目として載っている晩春の季節感を芭蕉は次の句で表した。

行く春や 鳥啼(なき) (うを)の 目は泪(なみだ)  芭蕉

 嵐山光三郎は、著書『芭蕉紀行』で次の様に述べている。

 行く春のなかで、離別を悲しんで鳥は啼き、魚も目に涙を浮かべている、というほどの意味である。
 「鳥が啼く」のはいいとして、「魚の目に泪」というのはいかなる意味であるのか。
 川を泳ぐ魚が泪を流す、というのはあまりに幼児的な描写である。
 「魚の目に涙」は、魚屋に並べられている魚の目が泪を流したように濡れている、という写生句ではないか、と私は考えた。〔中略〕
 と、突然、「魚とは(杉山)杉風(さんぷう)のことではないか」と気がついた。
 杉風は幕府御用達の魚問屋である。
 『細道』の旅をするにあたって、杉風や(山口)素堂によって建ててもらった芭蕉庵を売り払った。
 多くの門人の寄進でようやく建てた草庵を売るのは心苦しいが、杉風に相談して諒解を得て、平右衛門という人に譲り渡した。
 そのため、出発までのしばらくを、深川の杉風の別宅(元木場平野町北角)採茶庵(さいとあん)で過ごした。〔後略〕

()杉山杉風(1647-1732):蕉門十哲に数えられることもある / 豊かな経済力で芭蕉の生活を支えた / 人格も温厚篤実、芭蕉が最も心を許していた門人の一人。
 余談だが、現在、NHKTV朝の連ドラ『エール』で古山裕一の父親役の唐沢寿明(1963.06.03- )の妻女で女優の山口智子(1964.10.20- )は杉山杉風の子孫。
 栃木市の倭町に、創業100年を越える老舗旅館「ホテル鯉保(こいやす)」があり、当旅館経営者の山口家の長女が山口智子其の人。

 ※  ※  ※  ※  ※

 山口素堂(1642-1716)の名前を知らなくても、此の名句は日本人なら誰でも知っている程有名な句である。
 因みに、素堂は、甲斐国巨摩郡上教来石村(現・山梨県北杜(ほくと))に生まれた。
 20歳頃、家業の酒造業は弟に譲り江戸に出て林鵞峰に漢学を学ぶ。

1668(寛文08)年 刊行『伊勢踊』に俳諧が初入句
1674(延宝02)年 京都で北村季吟と会吟し和歌や茶道、書道なども修めた
1675(延宝03)年 江戸で初めて松尾芭蕉と一座した

 以後、深川芭蕉庵に近い上野不忍池や葛飾安宅に退隠し、芭蕉とは、門弟ではなく友人として以後互いに親しく交流した。
 「奥の細道」には、「松嶋」の処で、杉風と素堂の名が次の様に出て来る。
 「予は口をとぢて眠らんとしていねられず。旧庵をわかるゝ時、【素堂】、松島の詩あり。原安適、松がうらしまの和歌を贈らる。袋を解て、こよひの友とす。且、【杉風】・濁子(じょくし)が発句あり。」

 ※  ※  ※  ※  ※

目には青葉 山ほととぎす 初がつほ  山口素堂『あら野』

 連想は続く‥

 「山ほととぎす」というと杉田久女(1890-1946)の此の句も忘れられない。

(こだま)して 山ほととぎす ほしいまま  杉田久女

 此の句は、杉田久女が、福岡県と大分県に跨る英彦山で得た句。
 深い山峡に入ると、初夏の山にホトトギスの声が谺する。
 時鳥(←夏の季語)の響き渡る聲が、「ほしいまま」の一語と、此の時節(←写真撮影時は立夏の2日前)の「山笑ふ(←春の季語)」姿(=目に滲みる様な新緑と花々が咲いている美しい山の姿(添付写真参照))と重なり合って心に響く。

[01]Facebook up した『普門寺への逍遥』の途次、「山笑ふ」風景を back に撮影した写真

【後記】今回は、0511() 勤務先の昼休みでの写真をご紹介して締め括ることとする。

今日の豊橋は、天気が良く『初夏』の陽気!
 最高気温が、今年一番の27.4℃を記録した。

【前書】新緑の樹々の間を爽やかな初夏の風が吹き抜けてゆく‥

コロナ禍の終息祈り 風薫る  悟空

[02]勤務先での scene1
                  
[03]同上2

[04]同上3
                  
では、また‥〔了〕

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