2019年3月22日金曜日

【時習26回3-7の会 0749】~「松尾芭蕉:俳諧七部集『冬の日』から〔第5回〕」「03月09日:『旧料亭 稲本(稲本楼))跡』→『中村公園〔八幡社・木下長嘯子宅跡・豊国神社〕』→『妙行寺〔加藤清正生誕地〕』→『大一美術館/ルネ・ラリック展』→『三菱UFJ銀行貨幣資料館/廣重 保永堂版 東海道五十三次展』→『豊川市/西古瀬川 河津桜』を巡って」

■皆さん、お変わりありませんか? 今泉悟です。
 さて、今日も【時習26回3-7の会 0749】号をお届けします。
 先ず最初の話題は、松尾芭蕉「俳諧七部集」の第一集『冬の日』から〔第5回~37句~48句〕お届けする。
 
  おもへども壮年(さうねん)いまだころもを振(ふる)はず(1)
 
 上記【前書】について‥
(1)いまだころもを振(ふる)はず:杜甫の七言律詩「曲江對酒」の尾聯(落句)8句【老大徒傷未払衣〔 老大 徒(いたずら)に傷んで未(いま)だ衣()を払わず 〕】に拠る
【意】「世を遁(のが)れたいと思うのだが、27歳の壮年なので隠居出来ない」という意 /
【解説】野水は公職のある町役人 / 杜甫「曲江對酒」を以下に記す

曲江對酒     杜甫
 苑外江頭坐不帰 水精宮殿転霏微
 桃花細逐楊花落 黄鳥時兼白鳥飛
 縦飲久判人共棄 懶朝真與世相違
 吏情更覚滄洲遠【老大徒傷未払衣】
 
  曲江にて酒に対す
 苑外の江頭(こうとう) (ざして)して帰らず / 水精の宮殿、転(うたた)霏微(ひび)
 桃花、細やかに楊花を逐ふて落ち / 黄鳥は時に白鳥と兼ねて飛ぶ
 飲(いん)を縦(ほしいまま)にして久しく判(はん)す、人共に棄つるを / 懶朝(らんちょう) (まこと)に世()と相(あい)(たが)
 吏情(りじょう) 更に覚ゆ 滄洲の遠きを /【老大 徒(いたずら)に傷んで未(いま)だ衣()を払わず】
 
【意】曲江の畔に座って酒を飲めば陶然として役所には戻るつもりもなくなった / 水に囲われた宮殿(=芙蓉苑)は曲江の水面にきらきらと輝き映えて美しい
 柳絮は既に散り去り、いま桃花が其れを追って細やか散り出した / 鶯はシラサギと共に空を舞っている
 好きな様に酒を飲み暮らして幾年月、付き合いもなくなると共に世間の人たちは小生を見捨てた / 朝廷への出仕を怠った私には、世人と同じくすることはもう出来ない
 官吏としての心情は憂き世そのものであって仙境の境地に程遠い /【年老いてまだ官吏を捨て切れない自分の、なんと情けないことか‥】
 
【語彙】「苑外」:離宮の御苑の外/苑は芙蓉苑を指す /「江頭」:曲江の畔(ほとり)
「水精宮殿」:水晶で造った美しい宮殿/「芙蓉苑」/「転」:愈々、益々/「霏微(ひび)」:雨や雪などがちらつく形容→此処では水晶の宮殿がきらきらと光る様をいう
「楊花」:柳の綿毛/柳絮(りゅうじょ)/「黄鳥」:鶯(ウグイス) /「白鳥」:しらさぎ/「兼」:~とともに
「縦飲」:ほしいままに酒を飲むこと/「判」:此処では世間の付き合いを放棄するの意/「人共棄」:世間の人が皆自分を見捨てる
「懶朝」:朝廷へ出仕するのを怠ること(「懶」:怠る/厭う の意)
「吏情」:官吏としての心情/「滄洲」:東海にあるという仙人の住む所 /「老大」:年をとること/「徒傷」:空しく嘆きを託(かこ)つ/「払衣」:此処では官職を辞すること
 
37 はつ雪(ゆき)のことしも袴(はかま)きてかへる 野水
 
【意】初雪に町の景色もやゝ趣を変える / 此の私めは相変わらず公儀に出ての帰り途、堅苦しい袴姿である
【解説】発句 / 季語:はつ雪=
 
38 (しも)にまだ見る蕣(あさがほ)の食(めし) 杜国
 
【意】霜の時節になっても未だ咲き残る朝顔 / 其れを前に朝食をして出仕する
【解説】脇 / 季語:霜=冬 /
 芭蕉の「朝顔に我は食(めし)くふ男かな」(1683(天和03))を踏まえているか
 
39 野菊までたづぬる蝶の羽お(=)れて 芭蕉
 
【意】春夏を花を求めて飛び回った蝶もすっかり衰えて僅かに残った野菊の花に遣って来る
【解説】第三 / 季語:野菊=秋 /
 衰えた蝶の様子を「羽折れて」と具体的に読んだ処が俳諧
 
40 うづらふけれ(1)とくるまひきけり 荷兮
 
【意】「鶉よ見事な鳴き声を聴かせておくれ」と、飼っている鶉を牛車に載せて草深い野辺を行く
【解説】初表四 / 季語:うずら=秋 / 詠み手を高貴な風流人とした
(1)ふけれ:鶉が鳴くことを「ふける」という / 其の命令形 / 鶉の飼育は当時流行していた
 
41 麻呂(まろ)が月袖(つきそで)に鞨皷(かっこ)(1)をならすらん 重五
 
【意】物見車の風流な貴人は、月に興じて、自ら手すさびに鼓を鳴らす
【解説】初表五 /季語:月=秋 / 貴人の月見を「麻呂が月」と言う処が当時の俳諧
(1)鞨皷(かっこ):雅楽で奏される打楽器 / 鼓の一種
 
[01]鞨皷

 
42 桃花(たうくわ)をたをる(1)貞徳(ていとく)(2)の富(とみ) 正平
 
【意】松永貞徳は晩年巨万の富に恵まれたが、正に花鳥風月、風雅に恵まれた人だ
【解説】初表六 / 季語:桃花=春 /
(1)たをる:手で折り取ること
(2)貞徳:松永貞徳(1571-1654) / 江戸時代前期の俳人・歌人・歌学者 / 貞門俳諧の祖 /
 
43 雨こゆる浅香(あさか)(1)の田螺(たにし)ほりうへ(=)(2)て 杜国
 
【意】春雨に増水した浅香沼 / 浅香沼と言えば「花かつみ」が名高い /
 浅香沼の「花かつみ」を掘り植ゑのではなく、其の沼の田螺を、遠く都迄獲って運んで来る /〔 大尽の貞徳さんなら分けないことだろう 〕
【解説】初裏一 / 季語:田螺(たにし)=春 /
「雨こゆる」は「浅」を出す為の杜國が即興で創作した枕詞か /
 浅香沼の「花かつみ」ならぬ「田螺」を移した処が俳諧の妙 / 杜國は全て fiction 世界を興じている
(1)浅香:陸奥の歌枕「沼」/ 陸奥国の安積(=浅香)の沼(現・福島県郡山市安積山公園周辺に存在した沼)と言えば「花かつみ(=花菖蒲の一種か?)」が名高い
(2)ほりうへ(=):ほりう・う【掘り植う】/ 草木を掘り取って植えること /
 
44 (おく)(1)のきさらぎを只(ただ)なきになく 野水
 
【意】〔 其の「田螺」は、〕陸奥国の春二月を偲ばせる様に鄙びた声で鳴いている
【解説】初裏二 / 季語:きさらぎ=春 /「なく=鳴く」の主語には「田螺」のほか諸説ある
(1)奥:陸奥国
 
45 (とこ)ふけて(1)(かた)ればいとこなる男(をとこ) 荷兮
 
【意】夜更けの遊女屋でのこと / 床の中で何とはなく、互いの素性を語ってみれば何と自分たちは従兄弟同士じゃないか
【解説】初裏三 / 雑 / 床=恋 / 前句の「鳴くになく」=「号泣」を踏まえて此の句を詠んだ / 運命の拙さを噛み締める
(1)床ふけて:床中に夜ふけて
 
46 (えん)さまたげの恨(うら)みのこりし はせを
 
【意】二人は結婚する者同士が、何か事情があって添い遂げることが出来ずに終わった /
 現在の窮状を思えば、悲運を恨むしかない‥
【解説】初裏四 / 雑 / 縁・恨み=恋 /
 
47 口お(=)しと瘤(ふすべ)(1)をちぎるちからなき 野水
 
【意】自分の縁遠いのも、此の醜い瘤の所為だと思うが、取って仕舞おうと思っても大きな瘤だからなかなか出来ない
【解説】初裏五 / 雑 /
(1)(ふすべ):こぶ
 
48 明日(あす)はかたきにくび送(おく)(1)せん 重五
 
【意】籠城して戦ったが、いまや万策尽きて戦う余力もない / 明日は自分の首を敵に渡すしかあるまい
【解説】初裏六 / 雑 / 場面を軍記物の世界に転じる
(1)くび送り:自害して首級を敵に与えること
 
【小生comment
 次回は『冬の日』の〔第6回〕49句~60句をお届けする。
 お楽しみに!
 
■続いての話題についてである。去る0309日、月に一度の歯科健診に車で名古屋へ行く日なので、ついでに史跡・美術館等を幾つか巡って来た。
 
0415  起床  腹筋 2,000
0515  2.5kg 木刀素振り 60
0714  拙宅発→一般道85km 1時間45分→
0900  名古屋市中村区日吉町 べんがら亭(旧料亭 稲本(稲本楼))跡地着
 
[02]旧料亭 稲本(稲本楼))
                  

 矢張り取り壊されたとの噂は本当だった。
 稲本楼は跡形もなくなって仕舞っていた。
 半年前頃から取り壊しが始まった様だ。
 すると、世の中の無常を感じ、小生の脳裏にあの鴨長明の「方丈記」の冒頭が浮かんで来た。
 
「行く川の流れは絶えずして、しかも本の水にあらず。淀みに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。世の中にある人とすみかと、またかくの如し。玉しきの都の中に棟を並べ甍(いらか)をあらそへる、高き卑しき人のすまひは、世々(よゝ)を經て盡きせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔ありし家はまれなり。(後略)

[03]旧料亭 稲本正面

[04]同上 玄関前1

                  
[05]同上 同上2

[06]ジュディ・オング・倩玉『紅楼依緑』
                  

 最初の写真[03]は、其の日の朝09時過ぎに旧稲本楼取り壊された跡地を撮影。
 続いての写真[03][04][05]は、取り壊し前の旧料亭 稲本の写真 3枚。
 最後の写真[06]は、女優・歌手で木版画家の ジュディ・オング・倩玉(1950- )2005年 第37回日展 木版画部門で特選を受賞した『紅楼依緑』‥此の作品の対象が此の 旧料亭稲本だ。
 
0905  旧料亭 稲本(稲本楼))跡地発→一般道1.5km 5分→
0915  中村公園着
0920  八幡社
 
[07]八幡社前にて

[08]八幡社由緒
                  

0924  木下長嘯子宅跡
 
[09]木下長嘯子宅跡石碑


0927  妙行寺
 
[10]妙行寺山門
                  
[11]加藤清正公像前にて

[12]加藤清正生誕地 解説板
                  
[13]同上 石碑前にて


 妙行寺は、愛知県名古屋市中村区にある日蓮宗の寺院。
 山号は正悦山 / 本尊 : 法華三法。
 日蓮宗の信者で武将の加藤清正の出生地と伝えられている。
 
0937  豊国神社

[14]豊国神社大修築事業案内板
                  
[15]豊国神社


0945  中村公園発→一般道 1.5km 5分→
0950  大一美術館着
1000  ルネ・ラリック(1860-1945)
 
[16]大一美術館前にて
                  
[17]同上2

[18]館内のミュシャの作品群前にて
                  
[19]チーフリ(Chihuly)作品corner1

[20]同上2
                  
[21]同上3

[22]同『タイス』1925
                  
[23]ルネ・ラリック(Rene Lalique(1860-1945))『シュザンヌ』1925

[24]Dale Chihuly / Chinese Yellow Persian Set W / Black Lip Wraps, 1995
                  
[25]Auguste Daum & Antonin Daum / 木蔦文花器

[26]Charles Martin Émile Gallé / 水仙文マルケットリー花瓶
                  
[27]René Lalique / つむじ風


【小生comment
 ルネ・ラリックの他 シャルル・マルタン・エミール・ガレ(仏:Charles Martin Émile Gallé 1846.05.04-1904.09.23)、オーギュスト(1853-1909)&アントナン・ドーム(1864-1930)兄弟のガラス作品や、米国人間国宝 デイル・チフーリ(1941.09.20- )の作品、2018年 愛知ガラス展 を見た。
 同じガラス作品でも、温かさを感じるものから、クールさを感じさせるもの迄多岐に亘るのだと痛感した展覧会だった。

1046  大一美術館発→一般道 10km 30分→
1120  らあめん陣屋着
 
[28]らあめん陣屋前にて
                  
[29]小生の定番「味噌チャーシュー麵」


1205  らあめん 陣屋発→一般道0.7km
 
 三菱UFJ銀行貨幣資料館着
 
[30]三菱UFJ銀行貨幣資料館前にて
                  
[31]同館内入口にて

[32]本企画展leaflet /絵は上から「日本橋:朝の景」「箱根:湖水図」「庄野:白雨」
                  
[33]廣重「保永堂版 東海道五十三次~『白須賀』」

[34]パルティア・アケメネス朝ペルシャ・セレウコス朝シリア・プトレマイオス朝エジプト貨幣
                  
[35]古代ギリシャ〔マケドニア・バビロニア・カルタゴ〕貨幣

[36]ローマ帝国の貨幣1
                  
[37]同上2


 徳川美術館周辺では、名古屋市東区の花、ハクモクレンがもう咲き出した。
 
[38]徳川美術館周辺のハクモクレン
                  

1210分〜1315分 車内で昼休み
1318  三菱UFJ銀行貨幣資料館着
1320  保永堂版 東海道五十三次 展
1345  三菱UFJ銀行貨幣資料館着発→一般道 0.3km
1350  歯科医院着
1400分〜1425分 歯科健診
1430  歯科医院発→一般道 64km 1時間45
1615  豊川市八幡町上宿西古瀬 宮下橋着
 
[39]豊川市西古瀬川の河津桜をback1

[40]同上2
                  
[41]同上3

[42]同上4
                  
[43]西古瀬川に架かる宮下橋にて

[44]西古瀬川の河津桜1
                  
[45]同上2

[46]同上3
                  
[47]同上4

[48]同上5
                  
[49]同上6

[50]同上7
                  
[51]同上8


 前日、Facebook のお友達の加藤さんが豊川市内の河津桜が満開だと教えてくれたので早速行って見て来た。
 ホント、綺麗だった。添付写真[39][51]をご覧されたい。綺麗デショ!(^-)
 満開の河津桜と菜花を存分に堪能させて貰った。
 佐奈川のソメイヨシノとはまた違った美しさだった。
 
【前書】豊川市の桜と言えば、佐奈川のソメイヨシノが東三河の名所として有名だが、此の西古瀬川の河津桜も間違いなく豊川市を代表する桜の名所になると直感した。
 
  佐奈川のソメイヨシノに優るかな 西古瀬川の河津桜よ  悟空
 
1635  豊川市八幡町上宿西古瀬発→一般道 12km 25分→
1700  帰宅〔高校距離計:195.5km
 
【後記】今日最後の話題は、翌0310日の夕暮れ近く、食品スーパー・サンヨネに買物に行こうと玄関を出たら、拙宅の玄関脇の片隅で咲いている沈丁花が目に入った。
 と同時に、甘く芳しい沈丁花の香りにうっとりして暫し立ち止まった。
 
[52]拙宅の玄関脇に咲く沈丁花
                  
[53]同上 の傍らにて


【前書】沈丁花の花言葉は「栄光」「勝利」
 
  沈丁花「栄光・勝利」の馨(かぐわ)しさ  悟空

 では、また‥〔了〕

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