2020年10月9日金曜日

【時習26回3−7の会 0833】~「松尾芭蕉:俳諧七部集『あら野』から巻之六〔第51回/第491句~500句〕」「10月03日:『住吉燈台・船町港跡』→『大垣城公園』→大垣市守屋多々志美術館『守屋の描いたいろいろ』展→『大垣市おくの細道むすびの地記念館』→『大垣城』→『大垣市郷土館』展→『水門川河畔・芭蕉句碑』を巡って」

■皆さん、お変わりありませんか? 今泉悟です。今日も【時習26回37の会 0833】号をお届けします。

 今日最初の話題は、松尾芭蕉(1644-94)「俳諧七部集『あら野』から〔第51回/巻之六~第491句~500句〕」をご紹介する。 

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池晩蓮芳謝(1)

(1)池晩蓮芳謝(いけくれてれんばうしゃす):池が宵闇に沈み蓮花も萎(しぼ)んでいく様に見える /「謝」は花が凋落(ちょうらく)していく様子のことだが、此処では蓮花が宵闇に沈み見えなくなる様を示す 

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491 (はす)の香()も行水(ぎゃうずい)したる氣色(けしき)(かな) 

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【意】宵闇に美しい蓮花が見えなくなると共に、蓮花の芳香が心地よく漂って来た / 恰も行水でもしたかの様に清々しく!
【解説】季語:蓮の香=晩夏 / 

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暑月貧家何処有 客来唯贈北窓風(1)
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1)暑月貧家何処有 客来唯贈北窓風(しょげつひんかなんのゆうするところぞ きゃくきたりてただおくるほくそうのかぜ):六月大暑の候、我が貧しき拙家に何があろうか? 客が来たとしても、北窓から吹き込む涼風を贈り持て成すだけだ

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492 (すず)めとて切(きり)ぬきにけり北(きた)のまど 

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【意】涼みの為に何をしようか? / 何もないのでせめてもと、北に窓をくり抜き風を入れた
【解説】季語:涼め=三夏 /

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  大底四時心惣苦 就中斷腸是秋天(1)
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1)大底四時心惣苦 就中斷腸是秋天(おおむねしいしこころすべてくるし なかについてはらわたのたつことこれあきのてん):四季折々一年中何時でも心は苦しいが、わけても秋の暮は断腸の思いがする、の意

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493 (ゆき)の旅(たび)それらではなし秋(あき)の空(そら)

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【意】「駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮」(新古今集)等と雪中の旅の難渋を詠うが、此の旅はそんなものじゃない / 断腸の思いで旅をしているのだヨ

【解説】季語:秋の空=三秋/

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夜来風雨後 秋気颯然新(1)
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1)夜来風雨後 秋気颯然新(やらいふうののち しゅうきさつぜんとしてあたらたなり):夜来の風雨が過ぎ去り、一挙に秋の気配が新鮮で爽やか感じられる様になった、の意

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494 (あき)の雨(あめ)はれて瓜(うり)よぶ人(ひと)もなし

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【意】雨があがると、改めて秋風が冷ややかに感じられ、瓜売りの呼び声も最早ない
【解説】季語:秋の雨=三秋 / 瓜は夏の野菜 / 瓜の朝露に濡れた涼しさは、此の新涼に通じるものがある 

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遅々鐘漏初夜長 耿々星河欲曙天(1)
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1)遅々鐘漏初夜長 耿々星河欲曙天(ちゝたるしょうろうはじめてよながき かうかうたるせいがあけんとほっするてん):鐘の音もゆっくりした様子で漸く秋の夜長の季節が来た / 天の川が天に輝いて曙が来た、の意

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495 ひとしきりひだるうなりて夜ぞ長き

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【意】夕食を済ませ寝る迄に、少し空腹を覚える時間がある / 矢張り秋の夜長になんだナァ
【解説】季語:夜の長き=三秋 / 

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残影燈閇牆 斜光月穿牖(1)
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1)残影燈閇牆 斜光月穿牖(ざんえいともしびかべにひらめき しゃくわうのつきまどをうがつ):行燈の残影は窓に映り、斜めになった月の光は窓を照らす、意
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  白氏文集「残灯影閃牆」/ 白氏文集巻十 夢与李七庾三十二同訪元九()

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 神合俄頃間 / 神離欠申後
 覚来疑在側 / 求索無所有

 残灯影閃牆 / 斜月光穿牖
 天明西北望 / 万里君知否
 老去無見期 / 踟躕搔白首
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 神(しん)は合(がつ)す俄頃(がけい)の間(あひだ) / 神(しん)は離(はな)るる欠伸(けんしん)の後
 覚(さめ)(きた)りて側(かたはら)に在るかと疑ひ / 求索(きうさく)すれども有る所無し
 残灯影は牆(かき)に閃(ひら)めき / 斜月(しやげつ)光は牖(まど)を穿うがつ
 天明けて西北を望む / 万里(ばんり)君知るや
 老い去りて見(まみ)ゆる期()無し / 踟躕(ちちゆう)して白首(はくしゆ)を掻() 

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【意】
元稹と私の魂はごく僅かな間一つになっていたが、あくびを一つした途端に離れて仕舞った
目が覚めると、彼が傍に居る様な気がして、探し求めるけれども、何処にもいない
燃え残った灯は塀の上にちらちらと光り、傾いた月の光は窓から射し込んで来る
空が明るくなり、西北を望めども、万里の彼方に居る君は其れを知ってくれたか
年老いると、再会する期待もない。私はぼんやり立ち止まり、白髪頭を掻くばかりだ

【語釈】
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1)神合:魂が一つになる
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2)俄頃:僅かな時間
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3)欠伸:あくび
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4)踟躕:進むのを躊躇って立ち止まっている様
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5)白首:白髪頭

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【補足】白居易が、夢で旧友と共に元稹の家を訪ねたことを詠んだ詩の後半部分
目が覚めると友は傍らになく、残灯が閃き月光が射すばかり

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496(ひと)り寐()や泣(なき)たる貌(かほ)にまどの月(つき)

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【意】今宵も訪ねて来てくれぬ男を恨み、涙に濡れた顔 / 窓から射し込む月光が、寂しさ、凄(すさ)まじさ(=荒涼さ・殺風景)を際立たせている
【解説】季語:月=三秋 / 原詩は、友人を夢に見て、覚めた場面 / 其れを古典的な恋の場面に転じた 

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万物秋霜能懐色(1) 

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(1)万物秋霜能懐(=)(ばんぶつしゅうそうよくいろをやぶる):秋の霜は万物の色を変えて仕舞う、の意 

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497 白菊(しらぎく)や素顔(すがほ)で見()むを秋(あき)の霜(しも)

【意】霜を置く白菊は古来歌に詠まれてきた処であるが、矢張り白菊本来の美しさこそ味わいたいものだ
【解説】季語:白菊=三秋、秋の霜=晩秋 /

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十月江南天気好 可憐冬景似春華(1)

(1)十月江南天気好 可憐冬景似春華(じふぐわがつかうなんてんきこうなり あわれむべしとうけいしゅんかににたることを)10月になり、却って揚子江の南岸の地では好天が続き、冬の景色乍ら小春の様な穏やかさだ、の意

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498 こがらしもしばし息つく小春哉 

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【意】冬の木枯らしが今日は一服して穏やかな小春日和だ

【解説】季語:こがらし=初冬、小春=初冬 /

  寂莫深村夜 残雁雪中聞(1)

(1)寂莫深村夜 残雁雪中聞(じゃくばく(=まく)たるしんそんのよ ざんがんせつちゅうにきこゆ):静まり返った村里の夜、時節に遅れて飛来した雁の鳴き声が雪の中から聞こえて来る、の意

499 (はち)たゝき(1)()もこぬむらや雪(ゆき)のかり

【意】鉢叩きすら来ない洛外の寒村 / 雪の田圃に飛来した雁が、侘しく餌を探している

【解説】季語:鉢たゝき=仲冬 、雪=晩冬 /

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(1)(はち)(たゝ)き:空也忌(旧暦1113)より1231(大晦日)迄、京都の空也堂の僧侶が、洛中洛外を和讃(2)・念仏を唱え、巡り歩く
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2)和讃(わさん):仏教歌謡の一種 / 讃仏、讃法の協議讃と、讃僧の伝記讃がある / 仏の功徳・仏法を讃え、祖師・高僧の業績を述べた叙事歌謡 / 詩形は七五調連句で、四句一章形式が多い

  白頭夜礼佛名経(1)
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(1)白頭夜礼佛名経(はくとうにしてよるぶつみょうのきやうをらいす):白髪の老僧が仏名協(=三千佛の称名念仏)を唱えている

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500 佛名(ぶつみやう)(1)の礼(らい)に腰(こし)()く白髪(しらが)(かな)

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 【意】仏名のお経を唱(とな)えているのが白髪頭の老僧なので、其の伏拝誦経((=じゅ)きょう)の様が、自分の腰を懐く様にも見える
【解説】季語:仏名= /
(1)仏名:仏名会(ぶつみょうゑ) / 陰暦1219日から3日間行われる法要 / 仏名経を読み、三世諸仏の名号を唱え、其の年の罪障を懺悔し消滅を祈る法会
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【小生 comment
 次回は、俳諧七部集『あら野』から〔第52回 / 巻之六~第501句~510句〕をご紹介する。

 お楽しみに!
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■続いては、1003日に『住吉燈台・船町港跡』→『大垣城公園』→大垣市守屋多々志美術館『守屋の描いたいろいろ』展→『大垣市おくの細道むすびの地記念館』→『大垣城』→『大垣市郷土館』展→『水門川河畔・芭蕉句碑』を巡って来たことについてである。

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其の日は、昨日訪れた大垣市の美術館・史跡関連巡りについてお届けする

 「住吉燈台」→「大垣城「外観」」→「大垣市守屋多々志美術館」→「大垣市奥の細道むすびの地記念館」→「大垣城」→「大垣市郷土館」の順で巡って来た

 行程は以下の通り‥

0350分 起床→腹筋2,000回→

04402.5kg木刀素振り50分→

0530分 入浴→朝食→

0608分 拙宅発→一般道 2時間40分分 135km

0846分 大垣市住吉燈台着

【住吉燈台】

[01][左上]船町港跡にて1

 [右上]船町港跡1

 [左下]船町港跡にて2

 [中下]住吉燈台にて

 [右下]船町港跡

0855分 住吉燈台発→一般道5 0.5km/136km
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【大垣城公園】

[02][左上]大垣城天守閣を back 1

 [右上]大垣城天守閣と戸田氏鐵像の前にて

 [左下]大垣城天守閣を back 2

 [右下]同上3

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0905分 大垣城公園発→一般道3 0.2km/136km

0910分 大垣市守屋多々志美術館近隣駐車場着

【大垣市守屋多々志美術館『守屋の描いたいろいろ』展】1

[03][]大垣市守屋多々志美術館入口にて

 [右上]本企画展leaflet

 [右中]守屋多々志『オランダ正月』1940

 [右下]同『阿蘭陀正月』1965

【大垣市守屋多々志美術館『守屋の描いたいろいろ』展】2()

[04][左上]守屋多々志『かぐやひめ』1966

 [右上]同『二河白道』1982

 [左下]同『ある日の武蔵』1988

 [右下]同『巴里の若き岡倉天心』1995

0938分 大垣市守屋多々志美術館近隣駐車場発→一般道5 0.7km/137km

0945分 大垣市奥の細道むすびの地記念館駐車場着

【大垣市奥の細道むすびの地記念館】

[05][左上]大垣市奥の細道むすびの地記念館 入口前にて

 [右上]同 本企画展leaflet『蕉風俳諧の伝道師 支考』

 [左下]同 売店で入手した松尾芭蕉関連の冊子

 [中下]同 東隣の水門川の河岸から船町港跡を back 1

 [右下]同 同上の松尾芭蕉像の前にて

【大垣市奥の細道むすびの地散策】

[06][左上]水門川の河岸から船町港跡を back 2

 [右上]水門川 河岸にて

 [左下]同 芭蕉句碑にて

 [右下]同 芭蕉句碑

蛤のふたみにわかれ行(ゆく)秋ぞ 芭蕉

1200分 垣市奥の細道むすびの地記念館発→徒歩10 0.7km

1210分 大垣城天守閣着

【大垣城天守閣】

[07][左上]大垣城天守閣最上階にて1

 [右上]同上2

 [左下]同上3

 [中下]大垣城天守閣から伊吹山遠望

 [右下]同上の写真

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1245分 大垣城天守閣発→徒歩3150m

1250分 大垣市郷土館着

【大垣市郷土館】

[08][]大垣市郷土館前にて1

 [左下]同上2

 [右下]船町港跡の写真[左:2020/10/03]

 [右下]の写真:[右上:2013/03/30][右中:2016/04/02][右下:2016/08/31]

1345分 大垣市奥の細道むすびの地記念館駐車場発→一般道2時間45136/277km

1630分 帰宅〔走行距離計 277km〕〔了〕

【後記】今日の締め括りは、1006日の話である‥

【豊川市桜ヶ丘ミュージアム 美術常設展lll『郷土の美術』展 &『金魚美抄〜金魚を描くアーティストたち〜』】

 私用があり、午後半日休暇を貰い、帰宅する途中に豊川市桜ヶ丘ミュージアムに立ち寄った

 開催中の 美術常設展lll『郷土の美術』展と、『金魚美抄〜金魚を描くアーティストたち〜』を見て来た

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[09][
左上]豊川市桜ケ丘ミュージアム『常設展/郷土の美術』leaflet

[右上]同 常設展展示室入口にて
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左下]同 入口前の『金魚美抄』展案内看板前にて
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右下]同『金魚美抄』leaflet

【『井垣壮太 Piano Concert 』を聴いて】

[10][左上]ほの国とよはし芸術劇場PLAT『井垣壮太 Piano Concertleaflet1

[右上]同 演奏会終了後、壮太君の父、井垣君【3-3】と1

[左下]同 同上2

[右下]同『井垣壮太 Piano Concertleaflet2

 井垣壮太 Piano Recital は、盛況で素晴らしい演奏を聴かせてくれた

 演奏会終了後に、父君の井垣君と!

 杉浦君【時習26 3-8】にも会った

 三密対策として、入館時に alcohol 消毒と検温、演奏中もマスク着用、席は同一 group 以外は、一席空けての配置と徹底されていたので安心だった

  19:00から穂の国とよはし芸術劇場PLATにて開催された 井垣壮太 Piano Recital の演奏曲目は以下の通り

1. Schubert / 4つの即興曲 Op.90

2. J. S. Bach / France 組曲 No.5

3. Beethoven / エロイカ変奏曲

Encore : 古関裕而 / 東京五輪行進曲 & 栄冠は君に輝く medley

 壮太君の美しい J. S. Bach / France 組曲 No.5 の演奏を聴いていたら、virtual real な世界が脳裏に浮かび、此の短歌がスッと浮かんだ

  【前書】山城国当尾(とうの)「小田原山 浄瑠璃寺」にて

  行く秋に 吉祥天女の輝きも 霞みて見ゆる 君の微笑み 悟空

では、また‥〔了〕

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