■皆さん、お変わりありませんか? 今泉悟です。今日も【時習26回3−7の会 0833】号をお届けします。
今日最初の話題は、松尾芭蕉(1644-94)「俳諧七部集『あら野』から〔第51回/巻之六~第491句~500句〕」をご紹介する。
.
池晩蓮芳謝(注1)
.
(注1)池晩蓮芳謝(いけくれてれんばうしゃす):池が宵闇に沈み蓮花も萎(しぼ)んでいく様に見える /「謝」は花が凋落(ちょうらく)していく様子のことだが、此処では蓮花が宵闇に沈み見えなくなる様を示す.
491 蓮(はす)の香(か)も行水(ぎゃうずい)したる氣色(けしき)哉(かな)
.
【意】宵闇に美しい蓮花が見えなくなると共に、蓮花の芳香が心地よく漂って来た / 恰も行水でもしたかの様に清々しく!
【解説】季語:蓮の香=晩夏 /
.
暑月貧家何処有 客来唯贈北窓風(注1)
.
(注1)暑月貧家何処有 客来唯贈北窓風(しょげつひんかなんのゆうするところぞ きゃくきたりてただおくるほくそうのかぜ):六月大暑の候、我が貧しき拙家に何があろうか? 客が来たとしても、北窓から吹き込む涼風を贈り持て成すだけだ
.
492 涼(すず)めとて切(きり)ぬきにけり北(きた)のまど
.
【意】涼みの為に何をしようか? / 何もないのでせめてもと、北に窓をくり抜き風を入れた
【解説】季語:涼め=三夏 /
.
大底四時心惣苦 就中斷腸是秋天(注1)
.
(注1)大底四時心惣苦 就中斷腸是秋天(おおむねしいしこころすべてくるし なかについてはらわたのたつことこれあきのてん):四季折々一年中何時でも心は苦しいが、わけても秋の暮は断腸の思いがする、の意
.
493 雪(ゆき)の旅(たび)それらではなし秋(あき)の空(そら)
.
【意】「駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野のわたりの雪の夕暮」(新古今集)等と雪中の旅の難渋を詠うが、此の旅はそんなものじゃない / 断腸の思いで旅をしているのだヨ
【解説】季語:秋の空=三秋/
.
夜来風雨後 秋気颯然新(注1)
.
(注1)夜来風雨後 秋気颯然新(やらいふうののち しゅうきさつぜんとしてあたらたなり):夜来の風雨が過ぎ去り、一挙に秋の気配が新鮮で爽やか感じられる様になった、の意
.
494 秋(あき)の雨(あめ)はれて瓜(うり)よぶ人(ひと)もなし
.
【意】雨があがると、改めて秋風が冷ややかに感じられ、瓜売りの呼び声も最早ない
【解説】季語:秋の雨=三秋 / 瓜は夏の野菜 / 瓜の朝露に濡れた涼しさは、此の新涼に通じるものがある
.
遅々鐘漏初夜長 耿々星河欲曙天(注1)
.
(注1)遅々鐘漏初夜長 耿々星河欲曙天(ちゝたるしょうろうはじめてよながき かうかうたるせいがあけんとほっするてん):鐘の音もゆっくりした様子で漸く秋の夜長の季節が来た / 天の川が天に輝いて曙が来た、の意
.
495 ひとしきりひだるうなりて夜ぞ長き
.
【意】夕食を済ませ寝る迄に、少し空腹を覚える時間がある / 矢張り秋の夜長になんだナァ
【解説】季語:夜の長き=三秋 /
.
残影燈閇牆 斜光月穿牖(注1)
.
(注1)残影燈閇牆 斜光月穿牖(ざんえいともしびかべにひらめき しゃくわうのつきまどをうがつ):行燈の残影は窓に映り、斜めになった月の光は窓を照らす、意
.
白氏文集「残灯影閃牆」/
白氏文集巻十 夢与李七庾三十二同訪元九(抄)
.
神合俄頃間 / 神離欠申後
覚来疑在側 / 求索無所有
残灯影閃牆 / 斜月光穿牖
天明西北望 / 万里君知否
老去無見期 / 踟躕搔白首
.
神(しん)は合(がつ)す俄頃(がけい)の間(あひだ) / 神(しん)は離(はな)るる欠伸(けんしん)の後
覚(さめ)来(きた)りて側(かたはら)に在るかと疑ひ
/ 求索(きうさく)すれども有る所無し
残灯影は牆(かき)に閃(ひら)めき / 斜月(しやげつ)光は牖(まど)を穿うがつ
天明けて西北を望む / 万里(ばんり)君知るや
老い去りて見(まみ)ゆる期(き)無し / 踟躕(ちちゆう)して白首(はくしゆ)を掻(か)く
.
【意】
元稹と私の魂はごく僅かな間一つになっていたが、あくびを一つした途端に離れて仕舞った
目が覚めると、彼が傍に居る様な気がして、探し求めるけれども、何処にもいない
燃え残った灯は塀の上にちらちらと光り、傾いた月の光は窓から射し込んで来る
空が明るくなり、西北を望めども、万里の彼方に居る君は其れを知ってくれたか
年老いると、再会する期待もない。私はぼんやり立ち止まり、白髪頭を掻くばかりだ
.
【語釈】(注1)神合:魂が一つになる
(注2)俄頃:僅かな時間
(注3)欠伸:あくび
(注4)踟躕:進むのを躊躇って立ち止まっている様
(注5)白首:白髪頭
.
【補足】白居易が、夢で旧友と共に元稹の家を訪ねたことを詠んだ詩の後半部分
目が覚めると友は傍らになく、残灯が閃き月光が射すばかり
.
496獨(ひと)り寐(ね)や泣(なき)たる貌(かほ)にまどの月(つき)
.
【意】今宵も訪ねて来てくれぬ男を恨み、涙に濡れた顔 / 窓から射し込む月光が、寂しさ、凄(すさ)まじさ(=荒涼さ・殺風景)を際立たせている
【解説】季語:月=三秋 / 原詩は、友人を夢に見て、覚めた場面 / 其れを古典的な恋の場面に転じた
.
万物秋霜能懐色(注1)
.
(注1)万物秋霜能懐(=壊)色(ばんぶつしゅうそうよくいろをやぶる):秋の霜は万物の色を変えて仕舞う、の意
.
497 白菊(しらぎく)や素顔(すがほ)で見(み)むを秋(あき)の霜(しも)
.
【意】霜を置く白菊は古来歌に詠まれてきた処であるが、矢張り白菊本来の美しさこそ味わいたいものだ【解説】季語:白菊=三秋、秋の霜=晩秋 /
.
十月江南天気好 可憐冬景似春華(注1)
.
(注1)十月江南天気好 可憐冬景似春華(じふぐわがつかうなんてんきこうなり あわれむべしとうけいしゅんかににたることを):10月になり、却って揚子江の南岸の地では好天が続き、冬の景色乍ら小春の様な穏やかさだ、の意.
498 こがらしもしばし息つく小春哉
.
【意】冬の木枯らしが今日は一服して穏やかな小春日和だ
【解説】季語:こがらし=初冬、小春=初冬 /
.
寂莫深村夜 残雁雪中聞(注1).
(注1)寂莫深村夜 残雁雪中聞(じゃくばく(=まく)たるしんそんのよ ざんがんせつちゅうにきこゆ):静まり返った村里の夜、時節に遅れて飛来した雁の鳴き声が雪の中から聞こえて来る、の意.
499 鉢(はち)たゝき(注1)出(で)もこぬむらや雪(ゆき)のかり.
【意】鉢叩きすら来ない洛外の寒村 / 雪の田圃に飛来した雁が、侘しく餌を探している【解説】季語:鉢たゝき=仲冬 、雪=晩冬 /
.
(注1)鉢(はち)叩(たゝ)き:空也忌(旧暦11月13日)より12月31日(大晦日)迄、京都の空也堂の僧侶が、洛中洛外を和讃(注2)・念仏を唱え、巡り歩く
(注2)和讃(わさん):仏教歌謡の一種 / 讃仏、讃法の協議讃と、讃僧の伝記讃がある / 仏の功徳・仏法を讃え、祖師・高僧の業績を述べた叙事歌謡
/ 詩形は七五調連句で、四句一章形式が多い
.
白頭夜礼佛名経(注1)
.
(注1)白頭夜礼佛名経(はくとうにしてよるぶつみょうのきやうをらいす):白髪の老僧が仏名協(=三千佛の称名念仏)を唱えている
.
500 佛名(ぶつみやう)(注1)の礼(らい)に腰(こし)懐(だ)く白髪(しらが)哉(かな)
.
【意】仏名のお経を唱(とな)えているのが白髪頭の老僧なので、其の伏拝誦経(ず(=じゅ)きょう)の様が、自分の腰を懐く様にも見える
【解説】季語:仏名= /
(注1)仏名:仏名会(ぶつみょうゑ) /
陰暦12月19日から3日間行われる法要
/ 仏名経を読み、三世諸仏の名号を唱え、其の年の罪障を懺悔し消滅を祈る法会
.
【小生 comment】
次回は、俳諧七部集『あら野』から〔第52回 /
巻之六~第501句~510句〕をご紹介する。
お楽しみに!
.
■続いては、10月03日に『住吉燈台・船町港跡』→『大垣城公園』→大垣市守屋多々志美術館『守屋の描いたいろいろ』展→『大垣市おくの細道むすびの地記念館』→『大垣城』→『大垣市郷土館』展→『水門川河畔・芭蕉句碑』を巡って来たことについてである。
.
其の日は、昨日訪れた大垣市の美術館・史跡関連巡りについてお届けする
「住吉燈台」→「大垣城「外観」」→「大垣市守屋多々志美術館」→「大垣市奥の細道むすびの地記念館」→「大垣城」→「大垣市郷土館」の順で巡って来た
行程は以下の通り‥
03時50分 起床→腹筋2,000回→
04時40分 2.5kg木刀素振り50分→
05時30分 入浴→朝食→
06時08分 拙宅発→一般道 2時間40分分 135km→
08時46分 大垣市住吉燈台着
【住吉燈台】
[右上]船町港跡1
[左下]船町港跡にて2
[中下]住吉燈台にて
[右下]船町港跡
08時55分 住吉燈台発→一般道5分
0.5km/136km→
.
【大垣城公園】
[右上]大垣城天守閣と戸田氏鐵像の前にて
[左下]大垣城天守閣を back に2
[右下]同上3
09時05分 大垣城公園発→一般道3分
0.2km/136km→
09時10分 大垣市守屋多々志美術館近隣駐車場着
【大垣市守屋多々志美術館『守屋の描いたいろいろ』展】1
[右上]本企画展leaflet
[右中]守屋多々志『オランダ正月』1940年
[右下]同『阿蘭陀正月』1965年
【大垣市守屋多々志美術館『守屋の描いたいろいろ』展】2(完)
[右上]同『二河白道』1982年
[左下]同『ある日の武蔵』1988年
[右下]同『巴里の若き岡倉天心』1995年
09時38分 大垣市守屋多々志美術館近隣駐車場発→一般道5分 0.7km/137km→
09時45分 大垣市奥の細道むすびの地記念館駐車場着
【大垣市奥の細道むすびの地記念館】
[右上]同 本企画展leaflet『蕉風俳諧の伝道師 支考』
[左下]同 売店で入手した松尾芭蕉関連の冊子
[中下]同 東隣の水門川の河岸から船町港跡を back に1
[右下]同 同上の松尾芭蕉像の前にて
【大垣市奥の細道むすびの地散策】
[右上]水門川 河岸にて
[左下]同 芭蕉句碑にて
[右下]同 芭蕉句碑
蛤のふたみにわかれ行(ゆく)秋ぞ 芭蕉
12時00分 垣市奥の細道むすびの地記念館発→徒歩10分 0.7km→
12時10分 大垣城天守閣着
【大垣城天守閣】
[右上]同上2
[左下]同上3
[中下]大垣城天守閣から伊吹山遠望
[右下]同上の写真
.
12時45分 大垣城天守閣発→徒歩3分150m→
12時50分 大垣市郷土館着
【大垣市郷土館】
[左下]同上2
[右下]船町港跡の写真[左:2020/10/03]
[右下]の写真:[右上:2013/03/30][右中:2016/04/02][右下:2016/08/31]
13時45分 大垣市奥の細道むすびの地記念館駐車場発→一般道2時間45分136㎞/277km→
16時30分 帰宅〔走行距離計 277km〕〔了〕
【後記】今日の締め括りは、10月06日の話である‥
【豊川市桜ヶ丘ミュージアム 美術常設展lll『郷土の美術』展 &『金魚美抄〜金魚を描くアーティストたち〜』】
私用があり、午後半日休暇を貰い、帰宅する途中に豊川市桜ヶ丘ミュージアムに立ち寄った
開催中の 美術常設展lll『郷土の美術』展と、『金魚美抄〜金魚を描くアーティストたち〜』を見て来た
.
[09][左上]豊川市桜ケ丘ミュージアム『常設展/郷土の美術』leaflet
[右上]同 常設展展示室入口にて
[左下]同 入口前の『金魚美抄』展案内看板前にて
[右下]同『金魚美抄』leaflet
【『井垣壮太 Piano Concert 』を聴いて】
[10][左上]ほの国とよはし芸術劇場PLAT『井垣壮太 Piano Concert』leaflet1
[右上]同 演奏会終了後、壮太君の父、井垣君【3-3】と1
[左下]同 同上2
[右下]同『井垣壮太 Piano Concert』leaflet2
井垣壮太 Piano Recital は、盛況で素晴らしい演奏を聴かせてくれた
演奏会終了後に、父君の井垣君と!
杉浦君【時習26 3-8】にも会った
三密対策として、入館時に alcohol 消毒と検温、演奏中もマスク着用、席は同一 group 以外は、一席空けての配置と徹底されていたので安心だった
19:00から穂の国とよはし芸術劇場PLATにて開催された 井垣壮太 Piano Recital の演奏曲目は以下の通り
1. Schubert / 4つの即興曲 Op.90
2. J. S. Bach / France 組曲 No.5
3. Beethoven / エロイカ変奏曲
Encore 曲 : 古関裕而 / 東京五輪行進曲
& 栄冠は君に輝く medley
壮太君の美しい J. S. Bach /
France 組曲 No.5 の演奏を聴いていたら、virtual
real な世界が脳裏に浮かび、此の短歌がスッと浮かんだ
【前書】山城国当尾(とうの)「小田原山 浄瑠璃寺」にて
行く秋に 吉祥天女の輝きも 霞みて見ゆる 君の微笑み 悟空
では、また‥〔了〕
*
ブログへは【0626】号迄のback numberはURL:http://jishu2637.cocolog-nifty.com/blog
←此処をclickして下さい
*
0 件のコメント:
コメントを投稿