■皆さん、お変わりありませんか? 今泉悟です。今日も【時習26回3−7の会 0848】号をお届けします。
今日最初の話題は、松尾芭蕉(1644-94)「俳諧七部集『あら野』から〔第66回/巻之七~第641句~652句〕」をご紹介する。
ある人(ひと)子(こ)うしなはれける時(とき)申(まうし)遣(つかは)す
641あだ花(ばな) (注1)の小(こ)瓜(うり)とみゆるちぎりかな 荷兮(注2)
【意】瓜の弦(つる)に咲いた実をつけないあだ花 / 成人することなく亡くなったお子さんは小瓜のあだ花のように散って仕舞いましたネ
【解説】季語:瓜=晩夏 /
(注1)あだ花(ばな):咲いても実を結ばない花
(注2)山本荷兮(やまもと かけい(1648(?)-1716.10.10(享保元年08月25日(享年69歳))):本名:山本周知 / 尾張国名古屋の医者 / 通称:武右衛門・太一・太市
/ 別号:橿木堂・加慶 / 1684(貞亨元)年以来の尾張国名古屋蕉門の重鎮
/ 後年、内紛に撚り芭蕉と袖を分かつ / 荷兮のstanceは保守的で、芭蕉の唱導した俳諧革新、中でも「軽み」には迎合出来なかった
/ 離反前は、『冬の日』、『春の日』、『阿羅野』等の句集を編纂 /芭蕉が『更科紀行』出立に際しては、奴僕を提供する等、旅の安全も支援している
世(よ)をはやく妻(つま)のみまかりける比(ころ)
642 水無月(みなづき)の桐(きり)の一葉(ひとは)(注1)と思(おも)ふべし 野水(注2)
【意】初秋七月に秋の到来を告げて散る桐の一葉が、まだ七月になるぬ、六月のうちに散って仕舞った様な、あまりに早い、貴女(=野水の妻)の死であった / 貴女自身もそう思っているであろう / 自分もそう思う
/
水無月(6月)は夏の盛りなので桐の葉は落ちない / なのに君は六月に死んだ / 人生盛りの貴女の死は、恰も六月に桐の葉が落ちる様な有り得ない死だった
【解説】季語:水無月=晩夏 / 野水の妻が亡くなったのは野水30歳過ぎの若い時であった / 野水の妻は、貞享05年07月21日