2019年1月5日土曜日

【時習26回3-7の会 0738】~「松尾芭蕉『猿蓑集 巻之六 ~発句全35句~第2回』」「12月22日:明治神宮と6つの美術館を巡って(『明治神宮』→『三菱一号館美術館/フィリップス・コレクション展』→『Bunkamura ザ・ミュージアム/国立トレチャコフ美術館所蔵~ロマンティック・ロシア展』→『山種美術館/皇室ゆかりの美術展』→『郷さくら美術館東京/竹内浩一展』→『東京富士美術館/国立ロシア美術館所蔵~ロシア絵画の至宝展』→『中村屋サロン美術館/コレクション展示』)~後半」「12月29日 : 大学弓道部第17-18-19代合同同窓会・忘年会 開催報告」

■皆さん、明けましておめでとうございます。今泉悟です。本(2019)年も何卒宜しくお願いします。
 さて、今日も【時習26回3-7の会 0738】号をお届けします。
 今日最初にお届けするのは、『猿蓑』〔巻之六〕「幻住庵記(げんじゅうあんのき)」の末尾近くに「几右日記」と題され掲載されている発句全35句のうちの第6句~10句をご紹介する。

  几右日記

06 細脛(ほそはぎ)のやすめ處(どころ)や夏のやま  珍碩

【意】(幻住庵の近くにある)国分山は、師匠の細い脛(はぎ・すね)を休めるに格好の場所ですネ / ゆっくり休養して下さい
【解説】国分山の山麓に幻住庵はある / 夏の山→国分山→幻住庵 を示す /
「しばし足を休め給ふには最上の所也といふ意也」(猿蓑さがし)

  贈紙帳 (紙帳を贈る)

07 おもふ事(こと)紙張(しちょう)にかけと送りけり  里東

【意】私が贈った紙帳に書いて下さって結構ですよ、と伝えた
【解説】「紙張」は、和紙で作った蚊帳のこと /「送り」は「贈り」と同意
 
08 いつたきて蕗(ふき)の葉にもるおぶくぞも  野径
 
【意】蕗の葉の上に供えられている此のご飯はいったい何時(いつ)炊いたものやら‥
【解説】「おぶく」は仏壇への供え物のこと /「ぞ」は強調 /
 庵に江戸から持参した持仏が一体安置してあった / それにおぶく(=供え物)が蕗の葉の上に供えられている

09 (ほたる)(とぶ)(たたみ)の上(うえ)もこけの露(つゆ)  乙刕

【意】幻住庵では蛍は家の中も外同じ様に飛び回っている / 其れ故か、畳の上に苔に着いた露が落ちている
【解説】「山居茅屋の風情たるべし。蛍の風にさそはれて庵のうちを飛過る模様、畳も苔も筵(むしろ)の露々しきさまに思はるると云意」(猿蓑さがし)
 
10 (かんばせ)や葎(むぐら)の中(なか)の花(はな)うつぎ(1)  膳所 怒誰(2)

【意】芭蕉翁に幻住庵に来て頂き、此処が恰も葎の中に純白の卯の花が咲いた様です
【解説】『猿蓑さがし』に「顔とは翁を称誉するのこと葉(=言葉)にして、その風雅の表へ顕はるる所をさして云也」とし、「庸人不風雅の人々」を葎(むぐら)に比し、花うつぎに譬えて翁を称美したもの解する。但し、葎の中に白々と咲く一塊の卯の花を人の顔に譬えたと解する説もある
(1)花うつぎ:卯の花のこと
(2)怒誰:本名は高橋喜兵衛(?-1743) / 近江蕉門の重鎮の一人 / 幻住庵の提供者であった菅沼曲水の弟 /
 芭蕉が幻住庵に居た時期、曲水は丁度江戸勤務中で不在だった為、弟の怒誰が曲水に代わって芭蕉の身辺の世話をした

【小生comment
 次回は、巻之六 発句全35句の11句~15句をご紹介する。お楽しみに!

■続いての話題は、前《会報》に続き、1221()の夜行busで上京し、22()一日かけて明治神宮と6つの美術館(『三菱一号館美術館/フィリップス・コレクション展』→『Bunkamura ザ・ミュージアム/国立トレチャコフ美術館所蔵~ロマンティック・ロシア展』→『山種美術館/皇室ゆかりの美術展』→『郷さくら美術館東京/竹内浩一展』→『東京富士美術館/国立ロシア美術館所蔵~ロシア絵画の至宝展』→『中村屋サロン美術館/コレクション展示』)を巡って来た『山種美術館』以降、4美術館の展覧会の模様についてである。

【山種美術館『皇室ゆかりの美術』展】

1259  山種美術館着
1300  山種美術館『皇室ゆかりの美術~宮殿を彩った日本画家~』展

 1968(昭和43)11月に完成した皇居新宮殿に当時日本画壇の錚々たる作家の作品が飾られた。
 山種美術館創立者の山崎種二は、宮殿装飾を手掛けた日本画家のうち、安田靫彦、山口蓬春、上村松篁、橋本明治、東山魁夷、杉山寧に同趣向の作品制作を依頼。
 本企画展は、其れ等の作品を紹介するもの。
 更に本展では、和田英作、梅原龍三郎、安井曾太郎等の洋画迄、帝室技芸員等に拠る優品も紹介する、と紹介されていた。

[01]山種美術館入口近くの本企画展案内看板

[02]同館入口にて
                  
[03]同館内企画展corner入口にて

[04]西村五雲『松鶴』1933
                  
[05]橋本明治『朝陽桜』1970

[06]山口蓬春『新宮殿 杉戸楓/ 1/4の下絵』1967
                  
[07]杉山寧『曜』1970

[08]瀧和亭『五客図』1893
                  
[09]川合玉堂『鵜飼』1917

[10]下村観山『老松白藤』1921
                  
[11]下村観山『老松白藤』の前にて

       此の絵だけ撮影OKだったので早速撮影させて貰った

[12]横山大観『富士山』1931
                  
[13]橋本関雪『霜の朝』1934

[14]松林桂月『春雪』1944
                  
[15]和田英作『黄衣の少女』1934

[16]梅原龍三郎『バラと蜜柑』1944
                  
[17]安井曾太郎『葡萄とペルシャ大皿』1944


【小生comment
 流石に皇室ゆかりの日本画家と日本人洋画家の作品である。
 珠玉の傑作を確り見させて頂き大満足である。

1320  山種美術館発→恵比寿駅→地下鉄日比谷線→中目黒駅着→徒歩→

【郷さくら美術館東京『竹内浩一』展】
 
1353  郷さくら美術館東京着
1355  郷さくら美術館東京『竹内浩一のの世界~生きとし生けるもの、その美と心』展。

 竹内浩一氏は、氏の師 山口華楊(1899-1984)1938年に創設した晨鳥社(しんちょうしゃ)の実力者の一人。
 竹内氏の略歴は以下の通り。

1941年 京都市生まれ
1960年 京都市立日吉ヶ丘高校日本画科卒
1966年 山口華楊に師事
1967年 第10回日展初入選〔1979年 特選・文化庁買い上げ〕
1977年 第4回山種美術館賞展 大賞受賞
1995年 京都造形芸術大学教授就任
2002年 京都市立芸術大学教授就任
2010年 京都市文化功労賞受賞
2016年 大徳寺芳春院方丈に襖絵72面を描く

 本企画展では、郷さくら美術館東京のownerが竹内氏に鳥獣戯画をthemeに絵画を依頼して出来た「鳥獣戯画」series 5点を中心に開催。
 添付写真では、全5点のうちの3(最初期の「戯画游」2001年、次作の「戯画猿来迎」2003年、5作目「戯画釣名人」2009)と、最新作「遊化(左隻)」「遊化(右隻)2018年を紹介する。
 又、当美術館は、2012年の開館以来、「いつでも桜が見られる美術館」として展示されていた桜を描いた3人の日本画家に拠る傑作3点をご紹介する

[18]郷さくら美術館東京入口にて1
                  
[19]同上2

[20]竹内浩一(1941- )
                  
[21]本企画展leaflet

[22]竹内浩一『戯画游』2001
                  
[23]同『戯画猿来迎』2003

[24]同『戯画釣名人』2009
                  
[25]同『遊化(左隻)』『遊化(右隻)2018

[26]平松礼二『花と鳥』2010
                  
[27]栗原幸彦『春麗』

[28]渡辺信喜『桜』1985
                  

1432分 郷さくら美術館東京発→徒歩→
 
【前書】郷さくら美術館を出て、目黒駅方面へ歩くことほんの12分のところにある別所橋から見た現在の目黒川と桜樹林。
 目黒川を両岸から覆う様な桜並木は、時雨で枝が黒ずみうら寂しく冬の到来を無言で知らせていた。
 
  うら悲し 時雨でくすむ 目黒川  悟空

[29]別所橋から見た「目黒川」

[30]「目黒川」に係る「別所橋」欄干
                  

1434分「別所橋」発→徒歩→
1436分 東急電鉄 中目黒駅着

[31]東急電鉄 中目黒駅 入口

[32]同上 platform
                  

1440分 中目黒駅発→地下鉄日比谷線→恵比寿駅→
1450 JR恵比寿駅→JR山手線→
1459 JR新宿駅着

[33]JR新宿駅 中央線 platform に入線して来た 中央特快「高尾ゆき」電車


1505分 同駅発→JR中央線中央特別快速→1539 JR八王子駅

1545 JR八王子駅北口→(閉館時間に間に合う様に)TAXI(を利用)

【東京富士美術館『国立ロシア美術館所蔵/ロシア絵画の至宝』展】

1555分 東京富士美術館着
1600分 東京富士美術館/開館35周年記念『国立ロシア美術館所蔵/ロシア絵画の至宝』展

 本展は、サンクトペテルブルクの「国立ロシア美術館所蔵 ロシア絵画の至宝展夢、希望、愛~アイヴァゾフスキ―(1817-1900)からレーピン(1844-1930)まで」と題する企画展。

[34]東京富士美術館企画展入口にて
                  
[35]同館内本企画展看板前にて1

[36]同上2
                  
[37]イワン・アイヴァゾフスキー『第九の怒濤』1850

[38]同『海辺の朝、スダック』1856
                  
[39]同『大洪水』1864

[40]ワシーリー・マクシモフ『将来を夢見て』1868
                  
[41]ヒョードル・ワシーリエフ(1850-73)『雪解け』1871

[42]アレクセイ・サヴラーソフ(1830-1897)『沼地に沈む夕日』1871
                  
[43]ワシーリー・ポレーノフ(1844-1927)『草花の生い茂る池』1880

[44]イワン・シーシキン(1832-1898)『森の細道』1880
                  
[45]同『白樺の森の小川』1883

[46]同『嵐の前』1884
                  
[47]ニコライ・ピモネンコ(1862-1912)『キリスト降誕祭の占い』1888

[48]アブラム・アルヒーホフ(1862-1930)『ヴォルガ川にて』1889
                  
[49]イサーク・レヴィタン(1860-1900)『川の渓谷、秋』1896

[50]同『早春』1898
                  
[51]レーピン『裸足のレフ・トルストイ』1901

[52]アリスタルフ・レントゥ―ロフ(1882-1943)『修道院、ノーヴィー・エルサレム』1917
                  

 以下に、主催者が「ごあいさつ」で展示作品の作家の画風について紹介していた処を紹介する。
 
「イワン・アイヴァゾフスキーは、海の様々な諸相を、歴史画の様な大画面にdramaticの描き出し、イワン・シーシキンは、ロシアの雄大な自然を、詩的で幸福に満ちた情景として描き出し、またヒョードル・ワシーリエフやイサーク・レヴィタンは、自然の描写に、希望と喜び、悲しみと悲痛といった自身の内面を表現した。そして、イリヤ・レーピンは、人生の真実を描くことを芸術の指標として、人々の物語をカンヴァスの上に紡ぎ出した」

【小生comment
 此の「ごあいさつ」は各画家の特徴を言葉でなかなか上手く表している。
 今日は、渋谷 Bunkamura ザ・ミュージアムでロシア・Moscowにある国立トレチャコフ美術館所蔵展と、同じロシア・Sankt-Peterburg にある国立ロシア美術館所蔵展のロシアの名画を double で経験出来たことは、此の日の主目的の一つであるが、実際に叶えられて凄く嬉しい。
 ロシアの二大都市にある国立美術館が所蔵している数多の名画のロシア人画家達は、西欧の著名画家程知られていないが、技量では決して負けていないと感じた。
 特に18世紀中葉以降のロシア絵画は、アイヴァゾフスキー、シーシキン、レヴィタンの自然描写や、レーピンの人物画は秀逸である。
 小生、なかでもイリヤ・レーピンの人物画が大好きで、本企画展では、添付写真[51]レーピン『裸足のレフ・トルストイ』1901年 を紹介したが、渋谷 Bunkamura ザ・ミュージアム 国立トレチャコフ美術館所蔵展で展示されていた添付写真[53]A. Rubinstein 肖像 を合わせご紹介する。

[53]レーピン『ピアニスト、指揮者、作曲家 アントン・ルビンシュタイン(1829-84)の肖像』1881

[54]レーピン『作曲家 モデスト・ムソルグスキーの肖像』
                  

 又、レーピンは、此の Anton Rubinstein の絵を描いた々年に、ロシア国民楽派・ロシア五人組の作曲家の一人 モデスト・ペトロ―ヴィチ・ムソルグスキーの肖像画(添付写真[54])も描いている。
 今回の展示作品ではなかったが、此のムソルグスキーの作品も国立トレチャコフ美術館所蔵作品である。
 此の絵は、小・中・高の音楽の教科書でムソルグスキーを紹介する時いつも目にした有名な「写真」だと思っていたのが、実は、レーピンの肖像画だった。
 小生、此れがレーピンが描いた絵だと知ったのは今から3年前に浜松市美術館で『レーピン』展を見た時だった。
 浜松市美術館『レーピン(Ilya Repin)』展を見て」を以下のURL確かめてみて下さい。
 http://jishu2637.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/26-04221124ilya.html ←此処をclickして下さい
 20121130日付【時習26回3-7の会 0422】~「1124日:浜松市美術館『レーピン(Ilya Repin)』展を見て~」他ご参照
 今日は、近年になくロシアの名画を沢山見ることが出来ホント嬉しかった

[55]企画展を見終えて退出後に撮影した東京富士美術館外観


1640分 東京富士美術館発→
1645分 同所発→西東京bus
1702 JR八王子北口着〔弁当購入/軽食を摂る〕
1736 JR八王子発→中央線中央特別快速→
1816 JR新宿駅着→徒歩A6番出口→
1822分 新宿中村屋ビル地下1階入口着

[56]新宿中村屋ビル地下1階入口にて
                  

【中村屋サロン美術館『コレクション展示』】

1825  中村屋サロン美術館着
1827  中村屋サロン美術館『コレクション』展

[57]中村屋サロン美術館入口にて1

[58]本展leaflet
                  
[59]中村屋サロンの若き芸術家たち

 前列中央が 中村彝(つね)
[60]荻原守衛(碌山)(1879-1910)『女』1910
                  
[61]中村不折(1866-1943)『柴増上寺山門』1890

[62]高村幸太郎(1883-1956)『自画像』1913
                  
[63]中村彝(1887-1924)『小女』1914

[64]鶴田吾郎(1890-1969)『盲目のエロシェンコ』1920
                  

1845分 中村屋サロン美術館発→
1908分 バスタ新宿入口

[65]バスタ新宿入口付近にて

[66]同上2
                  

2355分 バスタ新宿発→

翌朝〔 2018. 12. 23
0520分 豊橋駅前着

0550分 帰宅〔了〕

■今日最後の話題は、1229()に名古屋にて開催した大学弓道部第17-18-19代合同同窓会の模様についてである。
  今日は、13時から17時迄、大学弓道部の我等が18代と、1年先輩の17代、1年後輩の19代 合同の同窓会を名古屋の在住の同期と1年先輩の御自宅で20人が集い開催した。
  地元名古屋、愛知県県下の人達は勿論、北海道室蘭市や東京からも集まってくれた。
  現役入学や浪人しての入学があり、今年誕生日を迎えた者からまだの者がいるので、大学の3年時次の開きで、実年齢は61歳から65歳迄いる。
  年寄りばかりだが、皆んな意外と若々しいネと互いに喜び合った。
  楽しいひとときの 4時間はあっという間に過ぎた。

    六十路過ぎ 旧交確かむ 師走かな    悟空

[67]参加者20人での全体記念写真1

[68]同上2
                  
[69]参加者20人一覧


【後記1】今年は干支でいうと『己亥の歳』である。
  昨年は、北海道地震や台風21号・24号など天災の多かった年だった。
  今年の干支は『己亥(つちのと・い)』。
  晩唐の詩人 曹松(そうしょう)が『己亥歳(きがいのとし)』という七言絶句の名詩を残している。
  曹松が此の詩を作った『己亥歳』は西暦879年、正に黄巣の乱(875-884)の最中にあった。
  結句の「一將功成萬骨枯(一将功成って万骨枯())」は、一人の将軍の功績の陰には数多の兵卒の犠牲があるのだ、という警句になっている。

        己亥歳
    澤國江山入戰圖
    生民何計樂樵蘇
    憑君莫語封候事
    一將功成萬骨枯

    沢国(たくこく)の江山(こうざん) 戦図(せんと)に入()
    生民(せいみん)何の計か 樵蘇(しょうそ)を楽しまん
    君に憑(よっ)て 語る莫(なか)れ封候(ほうこう)の事
    一将功成って万骨枯()

【訳】
  戦さ(黄巣の乱)で山川も戦場と化した
  人々は生きていくこともままならない
  君、戦功で諸侯になるなんて言うなよ
  一将軍の功績の陰には多くの兵卒が犠牲になっているのだから

  黄巣の乱の己亥歳から1,140年後の2019年は是非とも平穏な年でありますように!
  写真は、先刻撮影した拙宅の庭に咲いている草花の花とキンカンの実です。

[70]拙宅の庭に咲いている花々とキンカンの実
                  

【後記2】元日の夜、拙宅に帰省していた長男一家は一宮市へ、長女一家は千葉県船橋市へ、夫々配偶者の実家へ行った。
 長男が孫娘が書初めをして「つる」と「亥」と書いた写真を2枚送ってくれた。
 幼稚園年長組の満6歳の作品とは思えない出来栄えにジィジもビックリ!

[71]孫娘の書「つる」

[72]同「亥」
                  

  では、また‥〔了〕

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